□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月18日発行 第23号 ■ ───────────────────────────── 官房機密費は外務省のマネーローンダリングではなかったか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いささか特殊な内容になるが世間がまったく知らない外務省の暗部に ついて書いてみる。 私をその気にさせたのは、発売中の月刊「新潮45」8月号の中で 佐藤優元外務省主任分析官が機密費について重要な事を書いていたからだ。 ちなみに新潮45の8月号は、枝野民主党幹事長が、かつて自らの選挙の ために極左暴力団まがいのJR東労組幹部と覚書を交わしていた、という 醜聞記事をおどろおどろしく宣伝して売り出している。 実をいうと私もそれにつられて買い求めたのだが、私には佐藤優氏の記事 のほうがはるかに面白かった。 佐藤氏がどういう目的でかくも執拗なまでに外務省の醜聞を暴露し続けて いるか判らないが、この記事においても、自らもそうであった事を認めた上で、 外務省幹部もまた官房機密費まみれだった事を告白している。 肉を切らせて骨をうがつ如き激しい外務省批判だ。 その中で、こういうくだりがあった(新潮45 8月号 41ページ)。 「・・・いまになって振り返るとこのようなカネ(官房機密費)を受け取る べきではなかった・・・外務省に(も)外交機密費(報消費)がある。ロシア で情報収集や外交工作に機密費を使うならば、外務省内で決済書を書き、正規 の手続きをとって、カネを作るのが筋だ。 政治家である首相や官房長官、官房副長官が『この官僚は使える』と考え、 (官房)機密費を渡すようになると、公務員の政治的中立性が崩れる危険性が ある。筆者の場合、機密費は全額(本来の)仕事に使った。しかし、そうでは ない同僚もいた・・・海外に出張する外務官僚には、ランクに応じて『金一封』 が配られた。今になって思うと、あれも(官房)機密費だった・・・『金一封』 は純然たる小遣いだった・・・」 この短い文章の中には重要な指摘がいくつかある。 その中で、私が一番注目したのは、外交機密費の支払いには決済書を書き、 正規の手続きを踏まなければならないが、官房機密費の場合はそうではない (もっといい加減だ)と書いているところである。 もちろん外交機密費の場合でも決済書をごまかして書いたり、不正使用を 行う不逞の輩はいるわけだが、官房機密費の場合は政治家による工作の色合い がはるかに強いから、そのばら撒きは、よりいい加減かつ不明朗に行なわれて いた、と佐藤氏は言っているわけだ。、 ところで読者は、外務機密費の一部が官房機密費へ上納されていたとメディア が大騒ぎをしていた事をご記憶と思う。 この上納疑惑は結局曖昧なままに終わり、いつの間にかその悪例は廃止された ようであるが、まさしく外務省はこの上納された官房機密費を、あたかも 外交機密費のマネーローンダリングとして利用していたというのだ。 外務省の会計担当官であった松尾某は、外務省幹部の覚えめでたいやり手の ノンキャリだった。その彼が官邸に送り込まれ、上納した外交機密費を官房 機密費として一手に使っていた。 外交機密費の使用は外務本省の使用手続きと、外務省の決済が必要だ。いくら 外務省がいい加減だといっても最低限のチェック機能は働いている。 しかし官邸機密費に限っては、官邸は外交関係の機密費の細かい使途は 松尾一人の裁量に委ねていたに違いない。 それをいい事に、松尾はその官房機密費を幅広い外務省幹部の財布代わりに ばら撒いていたのではないか。 その暗部を隠蔽するために松尾一人に罪をかぶせ、外務省は組織崩壊を死守 したと私は確信している。 いまでも松尾事件に触れることが外務省ではタブーとなっている理由が そこにある。 松尾氏は刑に服して出所しているはずであるがメディアは一切それを 書かない。松尾氏の消息が注目される事は一切ない。 了 ≪メルマガに関する問い合わせは、info@foomii.com へ直接ご連絡願います≫ 出版記念会のお知らせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの ご参加を得て以下の通り行ないます。 森田さんとの打ち合わせで当日のプログラムは以下の通りとなりました。 13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」 14:05-14:45 森田実 「特別講演」 休憩 15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木) 16:00-16:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6) なお講演会の概要については次のURLを参考にして下さい。 http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20100702
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)