□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月17日発行 第22号 ■ ───────────────────────────── 消費税引き上げを日本に求めたIMFリポート ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 参院選挙が終わって間もない7月14日に、国際通貨基金(IMF)が 日本に対する2010年の年次審査報告書を発表した。 それを7月15日の各紙が一斉に報じた。 その報道振りは、ついにIMFまでも財政再建のために11年度から 消費税を引き上げを開始すべきだと日本に求めて来た、というものである。 10%どころか15%いや十年後には22%まで引き揚げなければならない、 と言っている、というものである。 さすがに16日の朝日新聞は、何だか日本の財務省の主張みたいだ、 財政再建の手法として消費税増税に偏っている点は否めない、と書いていた。 しかし、せいぜいその程度である。大方の新聞は、IMFレポートは菅首相 の財政再建路線を支持するものだ、とさえ書いている。 ところがインターネットで流れる情報は、この報告書を作成するにあたって IMFは日本の財政当局(財務省や日銀)や学者、有識者など幅広く協議をした 事を教えてくれている。 報告書の冒頭にその事が明記されていると書いている。 IMF報告書は日本政府の自作自演だ、マッチポンプだ、という声がネット上 で飛び交かうはずである。 私は自作自演とまでは言わない。 しかし財務省がIMF報告書作成に関与している事は明らかだ。 そしてその事をメディアは知らないはずはない。少しでもIMFレポートの 原文に当たればそれに気づくはずである。 それとも、その努力さえ怠って、財務官僚のブリーフをそのまま流した だけなのだろうか。 さすがにIMFレポートは参院選挙の前に発表されることはなかった。 その背景に財務官僚の意向が働いている事は間違いない。 選挙で民主党、自民党のいずれが勝とうとも、財務省にとっては消費税 増税が確実に行なわれる事が重要なのである。 どっちが勝つにせよ、重要な事は選挙後の政権が消費税増税をしやすく する環境づくりなのである。 私の体験を加えてIMFと財務省(旧大蔵省)との関係を解説するとこうだ。 IMFは財務省(旧大蔵省)が主務官庁として日本との関係を独占的に掌握 している国際機関である。 外務省であってもIMFと財務省が何をやっているのか一切知らされない。 ましてや他の省庁や民間人が財務省を飛び越えてIMFに口出しすることなど ありえない。 IMFの幹部ポストは財務官僚が独占する財務省の天下りポストである。 政治家もそれに口を挟めない。 因みに今のIMF副専務理事は、あの中川財務大臣朦朧記者会見に立ち 会っていた篠原尚之財務官(当時)である。なんのお咎めもなく、昨年11月に IMF副専務理事に天下っている。 そのようなIMFであるから、IMFの対日年次審査報告書を作成チームが 訪日した時も、財務省(旧大蔵省)が日本との関係を独占的に取り仕切った ことは想像に難くない。 IMFにとっては日本の財務省は協力者の一人に過ぎない。しかし財務省に とってはIMFは、トラの威を借りて日本を恫喝する一大権威である。 IMFがこう言っていると言えばいいのだ。 かつて私が外務省で経済協力を担当していた時、大蔵省が常に言う事は その国の経済についてIMFの報告書にはどう書いてあるか、ということ であった。 そしてその国に援助を与えるかどうかは、IMFの年次報告書で提案する 政策にどこまでその国が従順であるかという事であった。 IMFがその国に求める経済政策とは一口でいえば構造改革である。その国 の国民生活や経済体制を無視し、自らが正しいと考える経済政策を求める。 そのような一方的なIMFレポートを、大蔵省は金科玉条のように奉って、 それに従わない国には援助をやらないという。 援助欲しさのために改革を進めた発展途上国の多くは、社会不安が起こり 結果的に政権がつぶれる事が多かった。 その片棒を担がされたのが日本の援助政策であった。 それから20数年たって、今日本がIMFの威を借りた財務省の手によって 消費税引き上げをさせられようとは、さすがの私も思わなかった。 ネット上に流される言葉を借りればIMF報告書は財務官僚の自作自演である。 日本の政治家は財務官僚の言いなりになっても、我々国民はやすやすと消費税 増税を許してはいけないのである。 了 ≪メルマガに関する問い合わせは、info@foomii.com へ直接ご連絡願います≫ 出版記念会のお知らせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの ご参加を得て以下の通り行ないます。 森田さんとの打ち合わせで当日のプログラムは以下の通りとなりました。 13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」 14:05-14:45 森田実 「特別講演」 休憩 15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木) 16:00-16:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6) なお講演会の概要については次のURLを参考にして下さい。 http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20100702
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天木直人(元外交官・作家)