□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月14日発行 第17号 ■ ───────────────────────────── 主婦が正した国の誤り ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 選挙に目を奪われていた間に重要な最高裁判決が下されていた。 年金保険を受け取る者に相続税をかけた上に、今度はその保険金に さらに所得税をかけるという常識はずれの課税が行なわれきた。 そんな不合理な課税について7月6日に最高裁がそれを「二重課税だ。 許されない」と判決を下したのだ。 おりから消費税増税が参院選の一大争点になっていた時だ。野田財務相 はさっそく7日に、法令上さかのぼって返還できる「5年」より前の分まで、 取りすぎた所得税を返還する、と国民に迎合した。 この一連の顛末は、三つの観点から大きな意味を持つ。国(政治家・官僚 )が国民を裏切っている憂鬱な状況下にあって、大きな希望を与えてくれる。 その事について書く。 一つは、国民の知らないところで官僚がいい加減な事をやって来た。 その一端が、よりによって徴税の形で明るみになったのだ。税の仕組みは あまりにも複雑で、その内容は国に独占されている。しかも反国民的である。 その他の国の政策もおして知るべしだ。これを国民の手に取り戻さなくては いけない。 二つは、最高裁判事が「法の支配」を正しく実現すれば、国民のための 判決がどんどんと下されていくという事だ。 国民重視の流れは司法官僚の 権化である最高裁判事にも、遅々として、しかし確実に及びつつある。 三つは、政治家はその気になれば官僚行政を支配できるという事だ。 いくら判決が出ても、取りすぎた所得税をどこまで返還するかは税務官僚 に委ねられている。税務官僚に任せていたら時間がかかり、しかも税務官僚 の裁量の範囲内でしか是正されなかったであろう。最高裁も判決を下した後は そこまでの監視はしない。 それを政治が、即座に国民に有利な政治決断をしたのだ。 この三つの観点から、目の前で繰り広げられている混乱した政治風景を 眺めてみよう。 政界再編と言い、大連立と言い、あるいは聞きなれない部分連合と言い、 すべては政治家たちが、いかにして政治利権を分かち合って生き残ろうと する談合でしかない。 それは国民生活にとって何の利益ももたらさない。 しかし、この混乱は、国家権力を預かる政治家や官僚が「民意」に おののいてうろたえている姿である。 国民のためにどういう政策を講じなければならないかを真剣に考えて いる姿では決してない。 政権交代が起きた。その事によってはっきりしたことは、永久政権と 思えた自民党も、国民が見放せばかくも脆く政権を失うということだ。 菅民主党政権が大敗した。それはたとえ政権交代を成し遂げても、国民の 期待を裏切ればたちどころに批判にさらされるということだ。 この事を与野党とその政治家が痛感した事は大きい。 これからはどの政党が勝っても負けても、菅民主党政権が居直っても再び 政権交代が起きても、最後は国民の意見に従わざるを得ないという事だ。 政権を取るためには国民の声を無視するわけにはいかない。 政権を維持するためには国民の声に反する事はできない。 「みんなの党」が勝てたのは、増税の前に政治家や官僚が身を削れと 叫び続けたからだ。 勝ってしまった今となっては、それを実現するしかない。国民の期待を 裏切れば「みんなの党」なんか、たちどころに消えてしまうだろう。 その怖さを知っているから「みんなの党」は、馬鹿の一つおぼえのように そればかりを言い続ける。そしてそれを必ず実行するほかはない。 このように考えれば、我々は今の政治の混迷に悲観する事はない。 追い込まれているのは政治家たちだ。その政治家に特権を奪われようと している官僚たちだ。 国民にとっては面白い世の中になったのだ。国民が主役になりつつあるのだ。 それにしても今度の二重課税判決は、一人の主婦が長年当たり前のように 行なわれてきた課税の慣例に「おかしい」と立ち上がった事から生まれた という。 それを7月11日の毎日新聞「論調観測―主婦が正した国の誤り」が 教えてくれた。 象徴的な出来事が絶妙なタイミングで行なわれた。 政治家と官僚が独占してきたこの国の政策はあまりにもおかしい事が 多すぎたのだ。 その結果が日本経済の破綻であり、国民生活の窮乏ではないのか。 今度の参院選挙をきっかけに、この主婦のように国民が立ち上がれば いいのだ。 動揺する権力者たちをもっと厳しく監視すればいいだけの話だ。 どんな政党、政治家が政権を取ろうと、連立を組もうと、どうでもいい。 さっさと国民生活をもとに戻せ。それが出来なければ出来る者に替われ、 そう要求していくだけでいいのだ。 我々にできることはそれしかない。しかしそれができる我々こそ最強 なのである。 了 ≪メルマガに関する問い合わせは、info@foomii.com までお願いします。≫ 出版記念会のお知らせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの ご参加を得て以下の通り行ないます。 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6) なお講演会の概要については次のURLを参考にして下さい。 http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20100702
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天木直人(元外交官・作家)