□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月4日発行 第4号 ■ ───────────────────────────── 選挙で国政が留守になっている時に官僚が暴走している ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 選挙戦に入っても国政は滞ってはいけない。しかし、それは勿論 建前である。 政治家の頭は選挙で一杯だ。選挙期間中は政治主導の政策決定は どうしてもおろそかになる。それをいい事に、選挙に無関係の官僚が 重要な政策をどんどんと進めているとしたらどうか。 おそらくどの省庁もそれが行なわれている。 私は外交・安保政策については人一倍それを見抜ける。 6月30日の各紙が報じていた。防衛省の赤星慶治海上幕僚長は 29日の定例記者会見で、米海軍が主催し日本を含む14カ国が参加 してハワイ周辺海域で行なわれている環太平洋合同演習(リムパック 2010)に海上自衛隊が参加する事を明らかにした、と。 これだけなら何でもない記事のように見える。リムパックは毎年 のように行なわれてきた。 しかし多国間訓練への参加は、憲法で禁じられた集団的自衛権の行使 に当たるおそれがある。だからこそ海自はこれまで米国との二国間の 共同訓練に限定してきたのだ。 それを今回は、「特定の国や地域を対象とした訓練ではないので、集団 的自衛権の行使には抵触しない」と赤星幕僚長は記者会見でさらりと 言ってのけた。 こんな重要な政策決定を菅直人政権は閣議で決定していたのだろうか。 内閣法制局はその解釈を認めたのだろうか。私にはとてもそうは思えない。 もし菅民主党政権がこれを認めたのなら大問題だ。政治主導の名の下に 弁護士の枝野幹事長が内閣法制局の憲法解釈は要らないとしたのなら危険だ。 もし赤星幕僚長が自らの判断で合憲と解釈して多国籍訓練に踏み切った のなら、もっと大問題だ。 まだある。7月3日の日経は一段の小さな記事でさりげなく次のような 記事を流していた。 すなわち日米両政府は7月2日、都内で事務レベル協議を開き、核戦略 やミサイル防衛などの安全保障政策について話し合ったという。日米同盟 深化に向けた協議の一環であるという。 なぜこのような重要な協議を選挙期間中に急がなければならないのか。 いくら予定されていた協議であるとしても、選挙後に延期できなかった のか。大臣は延期しろと命じなかったのか。 繰り返して言う。政治家もメディアも選挙にかかりきりだ。その隙を ついて、官僚たちが政策を既成事実化している。 選挙に苦戦している北沢防衛相はそれどころではないに違いない。官僚に 任せきりだ。政治主導が泣いている。 了 ≪「天木直人メルマガ」に関するお問い合わせ、要望などは こちらから≫ http://foomii.com/00001/
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)