□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月3日発行 第3号 ■ ───────────────────────────── 日本が対米従属である証拠をついに見つけた ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 有馬哲夫という学者がいる。肩書きは早稲田大学大学院社会科学 研究科の教授(メディア論)である。 私が彼の名を知ったのは「日本テレビとCIA-発掘された正力 ファイル」(新潮社)という本を読んだ時からである。 その本は、有馬氏が米国の公開された機密文書を読み解いて、読売 新聞の中興の祖である正力松太郎氏が米CIAと通じていたという 衝撃的な事実を明らかにした本である。 それ以来、私は有馬氏の書く日米関係史について、つとめて目を通し てきた。そしていつも新しい史実を教えてもらってきた。 その有馬氏が最近著「CIAと戦後日本」(平凡社)(2010年 6月15日初版)を世に出した。 それを知った私は本屋でそれを買い求め一気に読了した。そして今まで のどの有馬氏の本よりも大きな衝撃を受けた。 なぜ戦後の日本がここまで対米従属であるのか。最も説得力のある答えが この本にある。 それは一言で言えば、吉田茂から始まって鳩山一郎、重光葵、緒方竹虎、 岸信介など、およそあらゆる日本の指導者たちが、直接あるいは間接に CIAと通じ、自らの政権獲得、維持のために、CIAに利用され、また 利用していたという事実である。 本の内容を具体的に述べる余裕はない。要するに戦後の日本の指導者 たちは、日本国民のためではなく、自らの政治的野望や主義、主張の 実現のために米国との関係を優先したという事である。 そして、米国はそういう日本の指導者たちを見越して、諜報、支援、懐柔、 恫喝、分断を繰り返して日本を思いのままに操作してきたのだ。 もちろん、思い通り行かなかったこともある。米国内部の意見の対立も あった。しかしそれらを補って余りある成功を戦後の日本占領という形で 果たしてきたのだ。 この本は、現在の政治家とCIAとの関係にはもちろん触れていない。 なぜならば機密文書はいまだ公開されていないからだ。 しかし過去の米国がそうしてきた以上、しかもそれが見事に成功した 以上、止める理由はどこにもない。 それどころかもっと広く、深く、米国は日本において情報活動と工作を 進めているに違いないことは容易に想像できる。 これが対米従属の理由である。 いかなる政党、政治家がこの国の指導者になっても対米従属は揺るがない。 その異常さを正面から批判する官僚、メディア、識者は現れない。 彼らもまた米国CIAの情報収集、工作の下で、直接、間接に米国の 影響下にあり続けてきたからだ。 いや、彼らは政治家のようなこころざしがないだけ、保身のためにより 従属的、迎合的とも言える。 彼らこそが米国の意向を体現する使い走り役を担ってきたと言えるのだ。 しかし私が今日のメルマガで読者に伝えたいのは、この荒涼とした 現実ではない。 このような史実を、自国民だけでなく世界の誰にも原則公開するという 米国の凄さである。 この事を有馬氏は次のように書いている。 「・・・アメリカは歴史が短い国とよくいわれるが、時間的に短い としても、その歴史は資料的にはきわめて『分厚く』、しかも 『開かれている』・・・これは為政者にとってはつらい制度だといえる。 なぜなら、自分が権力の座にある間だけではなく、その座を去った後も ・・・いや死してなお永遠に・・・国民や外国人によって監視、非難、 糾弾され続けることになる。遺族や親戚はいたたまれないだろう・・・ これは大変なプレッシャーだ・・・ アメリカでは国民の税金を使う国家機関は、あらゆる記録を保存する ことになっている。納税者に対する説明責任を果たすためだ。そして 納税者にとっては、権力を監視するために必要不可欠なものだからだ・・・ アメリカでは日本でメディアを賑わせているような密約問題は 考えにくい・・・原則としてすべて・・・公開されるからだ・・・ 政府機関には必ず記録を残し、それを保管する部局が設けられる。そして この部局の人間は職務を厳密に遂行する・・・職務を怠ったり、故意に 記録を隠蔽したり、破棄すれば、それはかなりの確立で露見し、のちのち まで責任追及されるからだ・・・」 ひるがえって日本の情報公開の現状はどうか。 6月26日の毎日新聞は福島大学の黒崎輝という準教授が、在日米 大使館の一等書記官が国務省の日本担当官に送った秘密書簡を、 米国立公文書館で発見したと報じていた。 その記事によると米軍核搭載艦の日本領海への通過・寄稿を容認した 米国との秘密議事録は、岸信介首相も藤山愛一郎外相も密約であると認識 していたという。 何のことはない。あれだけ大騒ぎをして調査・発表した日米密約の 報告はごまかしであったということだ。本当のことは政権交代が起きても 国民に明らかにされないのだ。 ましてや機密文書の破棄についてはすっかりウヤムヤにされて終わった。 日本の民主化はいまなお道遠い。 了 ≪「天木直人メルマガ」に関するお問い合わせ、要望などは こちらから≫ http://foomii.com/00001/
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天木直人(元外交官・作家)