━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「植草一秀の『知られざる真実』」 2012/03/10 小沢一郎元代表裁判の正しい受け止め方 第162号 ──────────────────────────────────── 東京第五検察審査会が二度の起訴相当の議決をしたとして公判請求された小 沢一郎民主党元代表に対する裁判で、検察官役を演じる指定弁護士が論告求刑 を行った。共謀共同正犯であることから容易に想像がつく禁固3年の求刑であ った。 マスメディアはこれを、通常の裁判と同じように報道している。 小沢氏の無実潔白を主張する市民も、通常の裁判と同じように、「必ず無罪 を勝ち取る」との姿勢を示している。 しかし、この図式で裁判を捉えること自体が、巨悪による陰謀の図式にまん まと嵌められていることを認識する必要があるのではないか。 裁判所による判決を固唾を呑んで見守るという姿勢は、あくまでも裁判所が 中立公正、正義の存在であることを前提とするものである。 ところが、小沢氏の秘書3名の裁判で、すでにこの前提は崩れている。政治 資金収支報告書への記載が刑事責任を問われるような虚偽記載であると認定す るには、その裏側に、実質的な犯罪が存在し、その実質的な犯罪を隠蔽すると いう重大な目的がなければならない。 秘書3名に対する有罪判決を示した登石郁朗判事は、このために、検察が立 証できずに、単なるアリバイ工作として法廷で演じた水谷建設関係者の信憑性 の乏しい証言をもとに、裏金受領という実質的な犯罪を無理やり事実認定し、 その上で秘書3名に対して禁固刑という判決を示した。 しかし、公判廷で秘書3名の弁護側は、水谷建設の社用車運転手に対する証 人尋問を行い、裏金が受領されたとされる日時に社用車が使われなかった事実 を明らかにしている。裏金が受領されたとの証言の信ぴょう性が著しく低いこ とが明らかにされている。 つまり、この事実ひとつを取ってみても、一連の裁判が中立公正に行われて いないものであることが明白なのである。 何よりも重要なことは、裁判のなかに、中立公正な裁判が行われないケース が歴然として存在するという、重大な現実を私たちが認識することである。 日本の裁判の不当性は一般論としてもこれまで指摘されてきたところである。 起訴された事案の99%が有罪判決となる。被告が否認している事案でも有罪… … …(記事全文6,568文字)
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植草一秀(政治経済学者)