━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「植草一秀の『知られざる真実』」 2012/03/09 経済政策運営の要諦を理解できない財務官僚 第161号 ──────────────────────────────────── 財政運営を論じる場合に重要なことは、経済全体の動向に十分な配慮を払う ことだ。法学部出身者が幅を利かせる財務省が陥りやすい間違いは、机の上の 計算で財政赤字が減るとの結果が出ると、本当にそれで財政赤字が減ると勘違 いしてしまうことだ。 経済には作用、反作用の側面がある。 財政赤字を減らす政策は一般に緊縮財政政策と呼ばれる。通常、5兆円の増 税は税収を5兆円増加させるために実施され、その場合には、財政赤字が5兆 円減ることが期待される。 普通に考えれば、このように考えるのも無理のないところなのだが、実際に この緊縮財政を実施してみるとそうはならないことが多い。 緊縮財政政策が経済を悪化させてしまうと、そのことによって財政収支に異 動が生じるからなのだ。 考えてみれば当たり前のことなのだが、財務省の行動を見ると、こうしたこ とがしっかりと認識されているとはとても思えない。 温故知新と言う言葉がある。 実際に、日本の財政運営の過去の事実を正確に検証することが大事だ。 参考にすべき事例が4つある。 1985年から1990年にかけて行われた中曽根政権の財政再建の取組み。 1997年度の橋本政権の消費増税。 2000-2003年に実施された森・小泉政権の緊縮財政 2003-2007年の景気回復の下での財政収支の変化。 この4つの事例を見ておきたい。 私は、1985年に『公社債月報』(公社債引受協会)という専門誌に、「財 政収支の中期展望」と題する短い論文を発表した。財政再建政策の可否を論じ たものだ。… … …(記事全文5,336文字)
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植草一秀(政治経済学者)