□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年10月12日第715号 ■ ============================================================= TPP参加を急ぐ必要などまったくない =========================================================== ここへきて再びTPPの参加問題が大きく取り上げられるように なった。 11月のAPEC首脳会議までに結論を出さなくてはならない、と。 野田首相は政府内部の調整を急げと指示し、メディアは野田首相に 政治的決断を迫る。 しかし、これほど現実を無視した馬鹿騒ぎはない。 そもそもTPPが日本にとって有益なものなのかという本質論に ついてはここでは問わない。 私の考えは明確だ。世界の貿易自由化は重要だが、それはWTOを はじめバイ、マルチの交渉の場で協議してきたことであり、特別に TPPだけが重要であり、それに乗り遅れるなと騒ぐ根拠もメリット もない、というものだ。 それよりも一体TPPの現状が今どうなっているのか。 それを知らずして一ヵ月後のAPEC首脳会議までに結論を迫る のはどう考えてもおかしい。 大手新聞はどこも書かないが、シンガポール発共同通信が伝えて いた。 TPP参加9カ国の作業部会がいつまでたっても合意に至らず、 ついに11月のAPEC首脳会議までに妥結することを断念したと。 12月のマレーシアでの作業部会で交渉を継続することになったと。 私がこれを知ったのは共同通信を引用する栃木県の地方紙である下野 新聞(10月9日)であった。 なぜ交渉が進まないのか。 それは米国が目指した「例外なき自由化」を売り物にしていたTPP が、各国の国内事情で例外を認めざるをえなくなったからだ。 おまけに言いだしっぺの米国さえも国内産業の突き上げで例外を要求し 始めたからだ。 こうなればもはやTPPの意味はほとんどなくなる。ただの自由化交渉 だ。各国が例外を言い出して収拾がつかなくなる。 それがTPPの現状なのである。 大手新聞は知ってか、知らずか、この事を一切書かない。 それを書けば、なんだ、急ぐ必要などないではないか、となる。 TPP9カ国の動きを見てからでも遅くない、となる。 そもそも米国とアジアの弱小国だけのTPPなど何の意味があるのか、 となる。 事実を隠してまで、なぜAPEC首脳会議までに日本の態度を表明し なくてはならないと大騒ぎをするのか。 それは米国の圧力があるからだ。 ただでさえ普天間問題で米国を怒らせている日本が、TPPでも米国 を怒らせては米国に見捨てられる、という対米従属意識が染み付いている からだ。 なぜ米国は日本の参加をそんなに迫るのか。 それは日本が参加しないTPPは無意味であるからだ。 中国も韓国も加入しない、アジアの弱小国と米国だけのTPPなど ほとんど意味をなさない。 米国は日本の市場開放が欲しいだけである。米国の経済苦境を日本の 市場をこじ開けることによって乗り切ろうとするのだ。 冷静な議論もへったくれもない。 野田首相もメディアも米国の要求に従うことしか頭にないのである。 、 了 ─────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)