□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年4月9日発行 第108号 ■ ───────────────────────────── 米産牛肉輸入問題─鳩山民主党政権のもう一つの悩み ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ここに来て米産牛肉輸入問題が再燃してきた。 メディアはこれを普天間基地問題と絡めて米国の鳩山民主党たたきだと書く。 国民もそれに影響されて圧力に屈するな、という思いを抱く。 しかしそれでは本質を見失しなう危険をおかす事になる。 米国の要求がなんでもかんでも理不尽なごり押しだと考えてはいけない。 確かに11月の中間選挙をひかえたオバマ政権の政治的攻勢はあるだろう。 輸出拡大で米国の雇用を増やしたいのはオバマ政権の方針だ。 しかしそのような国内政治の要請かが外交に影響を及ぼす事はお互い様だ。どこの国でもある。 問題は米国の要求がすべて理不尽なのか、日本の対応がすべて正しいのか、ということだ。 エコカー補助、郵政改革法案、米産牛肉輸入問題が今の三大日米経済摩擦だと書かれ出した。 しかし、それがすべて米国の不当な言いがかりで表面化したのではない。 それぞれに問題になる理由はある。その理由はそれぞれ異なる。それを正しく理解して第三者が見て 正しい対応をしなければWTOに訴えられて国際的審判を受ける事になる。 この米国産牛肉輸入問題もその一つである。ここからが今日のメルマガの趣旨である。 4月8日の日経新聞に来日中のビルサック米農務長官のインタビュー記事が掲載されていた。 そこで彼が強調していたことは「食品安全などの専門家による日米政府間協議を設けたい」ということだ。 「科学的な見地や国際的な規制の基準に沿わない障壁は撤廃が必要だ」ということだ。 さらに4月9日の各紙は赤松農相の語ったビルサック米農務長官の次の言葉を一斉に掲載していた。 「自分たちも柔軟に考えるので日本も柔軟に考えて欲しい」と。 これに対し赤松農水相も鳩山首相も「国民の食の安全を守ることが重要だ」という事しか言わない。 これは正しい対応ではない。米国を説得させることはできない。米国にいたずらに不信感を与えるだけだ。 この米国産牛肉輸入問題が大きな政治問題になったのは小泉・ブッシュ時代だった。 あの時はさすがの小泉首相も、日本人の食の安全まで犠牲にしてブッシュに追従するのかという声に 押されて米国の要求をはねつけた。 イラク戦争に協力してくれた小泉のことだから認めてやれといってブッシュ大統領がそれ以上日本に 迫る事はなかった。 しかし当時のファイルを読み返してみると、この米国産牛肉輸入問題については日本側に二つの大きな 問題があった。そしてその二つの問題は未解決のまま残っている。 一つは食肉牛の安全性について日本の専門家の間で意見の対立がありコンセンサスがないことだ。 二つ目は、日本が決めた「輸入肉を生後20ヶ月以下に制限する」という方針が国際的基準から見て 厳し過ぎるという事である。国際基準では生後30ヶ月とされており、お隣の韓国も含め多くの国が これを採用している。 ひょっとして農林官僚が決めた日本の基準が国際的に見て不当に厳しすぎるということではないのか。 農水官僚もそれに気づいていながらその誤りを認めるわけにはいかないのではないか。 そうであるとしたら官僚のエゴでいたずらに日米関係を悪化させ国益を失うことになりかねない。 農水官僚の言うままに米国との交渉に臨む赤松農水相は、脱官僚の民主党政権に反する事になる。 私がそう思うのは官僚の仕事の不勉強さといい加減さを知っているからだ。 その一つの例がトクホ(特定保健用食品)のいい加減さである。 確かな根拠もないのに健康によいと指定して、国民の健康志向をあおる。それを利用してやたらに トクホ食品をふやして売り込みに加担する。 しかしその根拠に疑義がある事が指摘されて久しい。あげくの果ては人気トクホ食品「エコナ」に 発がん性危険があるとして花王が販売自粛を公表したことは記憶に新しい。 この事を4月8日の産経新聞が「気分の時代」に書いていた。 結論を言う。 対米関係の悪化はすべてが米国の責任ではない。 無能な官僚が日米関係を不要にこじれさせている面が多分にあるのだ。 その官僚の無能さを見抜き、正しく政治指導できない政治家の器量のなさにも責任があるのである。 _________ 天木直人のメールマガジン 2010年4月9日発行 第108号

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