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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「天木直人メルマガ」2010年3月25日発行 第86号
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□■□■  【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■    天木直人のメールマガジン 2010年3月25日発行 第86号 ■          ─────────────────────────────          鳩山首相は拉致被害者・蓮池薫氏を政府代表にして拉致問題に取り組め      ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    久しぶりに拉致問題について書く気になった。  私をその気にさせたのは、3月24日の朝日新聞がその一面を使って掲載した 蓮池薫氏のインタビュー記事であった。  その言葉は、拉致問題を語る誰の言葉よりも私の心に響いた。  それは拉致被害者の言葉であるからだけではない。  そこに述べられている内容の中にこそ、どの政権もなし得なかった困難な拉致問題の 解決の鍵があると思うからだ。  なぜ小泉訪朝外交が上手く行かなかったのか。  それは歴史認識を踏まえた日朝関係の清算を行うという王道を歩むことなく、ひたすら 功名心から拉致問題を利用しようとしたからだ。  手柄をあせった外務官僚が、米国を無視し、北朝鮮の核疑惑を軽視して、拉致被害者の 何名かを連れ戻せば国民が喝采する、それで終わりにできる、と考えたからだ。  そのシナリオに応じれば国交正常化と巨額の経済支援(賠償金)を与えると密約したからだ。  その後の展開は、国民が目撃したとおりである。  北の核を最重要視する米国が怒り、核問題を全面に掲げて乗り込んできた。  交渉は六カ国協議に移り、拉致は日本だけの厄介な問題に封じ込められた。  北朝鮮との密約を破った外務省は北朝鮮の信頼を失い、まともな交渉が出来なくなった。  北朝鮮に怒った国民は制裁強化を求め、話し合いの余地を閉ざした。  日本の過去の誤りをことさら強調し贖罪と国交正常化ばかりを叫ぶ左翼と、北朝鮮撃つべし と制裁強化ばかりを叫ぶ右翼のイデオロギーの狭間にあって、政治は正しい指導力を発揮 できないままだ。  取り残されたのは拉致被害者とその家族である。  蓮池氏は言う。  「拉致されてまもなく、北の人間から、親類が日本に強制徴用されて、さんざんな目にあった という話を聞かされました」と。  これは紛れもなく拉致問題を考える時の欠かせない視点の一つである。  しかし彼は続けて次のように言う。  「その時、私の心に浮かんだのは、『その時生まれていなかった私に何の関係があるのか。拉致 しておいて何だ』という反発でした」と。  これも拉致問題の重要なポイントだ。いかなる理由があるにせよ、拉致は許されない人権侵害だ。  私が蓮池さんの言葉で感動したのは、その後に続く一連の言葉である。  蓮池さんはこう話す。  「日本の植民地支配の事はそれなりに知っていた。でも(北の人間が語った強制徴用の話は) 私の感情をひどく刺激しました。相手の感情を理解すること、それを刺激しないこと、日本と 朝鮮半島の過去の事実をふまえながら今後の関係を発展させていくヒントは、そこにあるような 気がするんです・・・」  そして蓮池さんは続ける。  「・・・拉致したのは一般の人ではなく、指示した人間たちとその指示を受けた工作員です。 北朝鮮で本当にやさしくしてくれた人も、印象に残る人もいる。看病してくれたり、食事が合わない と気を使ってくれたり。将来そういう時期がくれば、また会ってお礼を言いたい人もいます・・・  だが、それもすべては拉致問題が解決し、情勢が変化してからのことです・・・まずは被害者 全員が帰ってくる(事)・・・」  この抑制した物言いの中に、解放されてもなお拉致問題の犠牲者であり続ける蓮池さんの苦しさ が痛いほどわかる。  そして鳩山新政権に物申す蓮池さんの次の言葉である。これがこのメルマガの言いたかった事である。  「・・・拉致問題が忘れ去られているという思いがあります。私がマスコミの質問にこうして お答えするのも、あまり行きたくない拉致現場で写真撮影に応じるのも、この問題をきちんと皆さん に覚えておいてもらいたいからです・・・  一番言いたいのは、最終的には政府だけが、北朝鮮を交渉の場に引っ張り出して解決につなげられる ということです・・・拉致問題の解決を、交渉でやるのか、力でやるのかという話がありますが、 僕は交渉でやるしかないし、それが早いと思う・・・  北朝鮮に残されている拉致被害者の家族の方々がおっしゃることは(筆者註:強硬な発言を繰り返して いるのは)、被害者を思いながら、何としてでも帰ってきてほしいという気持ちの噴出です。政治的に バランスをとって、北朝鮮の立場までは考えて話したりする余裕はないし、その必要性はありません。  そこを受け止め、斟酌するのは政府の責任です・・・北朝鮮を交渉相手として振り向かせて、拉致問題 解決にもっていくようにしなければならない。そのためには、何が必要かは政府が一番知っている はずです・・・」  その後に続く蓮池さんの次の言葉こそ、私は鳩山首相に聞かせたいと思った。  「政権交代があって、いままでのしがらみがなくなったのだから、どんどんやっていってほしいの ですが。他に大変なことがあるから進まないのか。もう少しがんばっていただきたいなと思うんです。 姿勢がいまいち見えないですね・・・拉致問題の解決のためにも、(日朝国交正常化や賠償問題を含めた) 交渉を早くはじめてほしい・・・」  普天間問題で頭が一杯なのはわかる。しかし首相がなすべき仕事はもちろん一つではない。一つだけで いいはずはない。  鳩山首相はただちに蓮池薫さんを拉致問題の政府代表に任命し、国民の目の前で、蓮池さんと二人三脚 で指導力を見せるのだ。  お膳立てされて行くのではなく、友愛の精神と首相の指導力一つで蓮池さんと平壌を訪れるのだ。  そして金正日総書記と話し合うべきである。  時間がないのは皆おなじだ。  首相も総書記もそして拉致被害者家族の人たちも。                  _________              天木直人のメールマガジン 2010年3月25日発行 第86号    

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