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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「天木直人メルマガ」2010年3月20日発行 第81号
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□■□■  【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■    天木直人のメールマガジン 2010年3月20日発行 第81号 ■          ─────────────────────────────           ああ、外務省という官僚組織が音を立てて崩れつつある      ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    3月19日、衆院外務委員会で日米密約に関する参考人質疑が行われた。  この歴史的な参考人質疑の重要性について、果たしてどれほどの国民が気づいて いることだろうか。  この質疑のやりとりは、3月9日に公表された有識者委員会の報告書などよりも はるかに衝撃的な意味合いを持っている。  日米密約の真相を曖昧にしたままで幕引きをはかろうとした有識者委員会の報告書 と違って、かつての外交当事者の証言は生々しく、重い。  たとえば東郷元条約局長は非核三原則に関し、かつて外務省部内で検討した結果、核搭載艦 の寄港・通過の是認やむなしで一致していた事を明らかにした。  大平正芳元首相の女婿である森田一元運輸相は、大平首相が「核持ち込み」を認める 方向で非核三原則を変更する事を真剣に考えていたが、それを果たす事なく急逝した無念 を語った。  これを受けて3月20日の読売新聞の社説は、鳩山政権がこの問題を「深追い」せずに 非核三原則を繰り返すだけでは、密約を放置していた時代と変わらなく、と断じている。  これこそが有識者委員会が避けて通った問題だ。  核密約の問題は、密約があったかどうかを突き止めるだけにとどまらない。なぜ密約を 交わさなければならなかったのか。そしてそれをなぜ隠し続けざるを得なかったのか。 それを同時に明らかにしなければならない。  そしてここまで問題が明らかになった以上、鳩山政権は、米国の核抑止を重視して核持込 を国民の前で認めるか、日米同盟の解消を視野に入れて非核国家日本を貫くかの、という 「究極の選択」をしなければならないのである。  この問題から逃げる限り、鳩山民主党政権もまた自民党政権と同様に密約を続ける事になる。  このような重要な問題提起をしてくれたのが3月19日の参考人質疑であったが、実は この参考人質疑においては、もう一つの重要な証言が行われていた。  それが今日のメルマガのテーマである。  密約の存在に関して斉藤邦彦氏と東郷和彦氏という二人の元条約局長の証言がまっぷたつに 対立した。  すなわち、斉藤氏は、引き継ぎがなかった事などを理由に「必ずしも密約とはいえない」と した有識者委員会の見解に「同意する」と述べたのに対し、東郷氏は、国民に公開された日米 共同声明を超えた「密約」があったと断言した。  そして東郷氏は、自ら整理した密約ファイル16件のうち、8件しか見つかっていない事を証言し、 それらの文書を引き継いだ者として、谷内正太郎条約局長(後の外務事務次官)、藤崎一郎北米局長 (現駐米大使)という実名をあげ、彼らによる文書廃棄の疑いをほのめかした。廃棄の有無を 外務省として調査してもらいたいと要請した。  3月20日の朝日、毎日、東京新聞の社説はこぞってこの証言を取り上げ、文書破棄が事実なら 国民と歴史への背信だと厳しく断じている。  当初は犯人探しに消極的だった岡田外相も、ついに3月19日の参院外務・防衛委員会で 「なぜ(紛失が)起こったのか誰が考えても不思議なので、よく調査しなければいけない」と 調査を約束した。  これまでの言動を見る限り岡田外相には、関係者を特定したり、関係者の責任を問うような政治的 決断は期待できない。  しかし、もし複数の外務官僚による機密文書の破棄が明らかになれば、そして少なくともその事実 ぐらいは確認されないと話にならないが、外務省という組織の権威は大きく失墜することになる。  折から、外務事務次官という外務省組織の最高職を経験しながら日米密約の存在を告白し、今回の 密約騒動のきっかけを作った村田良平氏が18日急逝したと報じられた。  最後の取材のときに残した言葉が、「政府が国民をずっとだましてきた。こんなばかばかしい話で コメントすることはない」というものだったという(3月20日日経)。  それにしても、とつくづく思う。  日米外交という外務省にとって最も重要な外交に関し、歴代の次官経験者ら幹部が、次々と 本音を語り始めた。  結束を貫いてきた外務省の幹部たちが、いまこうして対立した発言を繰り返し、お互いを批判し あっている。  こんな事は私が外務省にいた頃には考えられなかった事だ。  国会の証人席に座るかつての上司や同僚の姿を見ながら、そしてメディアで報じられるOB、 現職の同僚たちを思い浮かべながら、私は思わざるを得ない。  もはや外務省という組織を統括できる外務官僚はいなくなった。  外務省という組織が今私の目の前で音を立てて崩れ落ちつつある、と。                 _________              天木直人のメールマガジン 2010年3月20日発行 第81号   おしらせ  3月15日から高知新聞に6日間にわたって私の寄稿が連載されています。  日本のパレスチナ政策に対する渾身の批判です。それはまた日本の対米従属外交批判でも あります。   詳しくは高知新聞(088-822-2111) 天野弘幹記者に連絡下さい。  

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