□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年3月6日発行 第66号 ■ ───────────────────────────── 米国にとって原爆投下は逃れられないトラウマのようだ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 私は2月7日のメルマガで、タイタニックやアバターなどのヒット作を世に贈った ジェームズ・キャメロン監督の次回作が、原爆をテーマにしたものになるかもしれない という報道を紹介した。 もしそれが実現すれば素晴らしい事だと期待した。 ところが、その原作である米作家の新刊書の信憑性に疑義が出てきたと言うニュース を共同通信が流し、それを3日の産経新聞が報じた。 3月4日の朝日新聞が、さらにそれを詳しく報じた。 朝日の記事によれば、その新刊書に「投下前に原爆の爆発事故があった」との記述があるが、 それは「事実無根」であると関係者が抗議し、出版が中止される事態になったのだという。 原爆投下機エノラ・ゲイに同行したB29に乗り込んだという元米兵の証言に基づくその 著書は、B29が飛び立った太平洋のテニアン島の基地で、投下前の原爆が爆発し、若い科学者 一人が死亡。原爆の破壊能力が半分以下になった、と書かれているという。 これに対し、米紙ニューヨークタイムズ紙が2月下旬、元米兵はB29に乗っていなかった とする当時の乗組員らの証言を報道。原爆を開発した米ロスアラモス研究所も原爆事故を否定し、 著者が「訂正」の意向を示す事態になったという。 他にも疑義が生じ、出版元のヘンリー・ホールト社が3月1日、印刷や出荷を取りやめる方針を 明らかにしたという。 原作が出版停止になるのなら、キャメロン監督も映画化は断念せざるをえないだろう。残念だ。 広島と長崎で二度被爆してなお生き残った93歳の男性との感動の対面と、彼の手を握って 原爆の悲劇を後世に残すと語ったキャメロン監督の約束は果たせなくなるのだろうか。 そう思ったところで、なぜこの本が出版停止にまで追い込まれたのだろうかと考えてみた。 原作の一部に間違いがあったとしても、伝えられる間違いは大した間違いとは思えない。 その著書のすべてが否定される程のものとはとても思えない。 間違いを謝罪して訂正すればいいだけの話ではないか。出版を停止するとは大げさだ。 それとも作品全体がデタラメなほど酷いものであるのだろうか。 それはもちろん分らない。 しかし、ひょっとして原爆投下を告発するような作品自体が米国内で反発を受け、実際以上に 誤りが批判されたうらみはないのだろうか。政治的圧力によって出版者は発行を自粛したのでは ないのか。 私がそう思った理由は、同じ3月4日の朝日新聞の舟橋洋一主筆が書いていた「日本@世界」 の記事の中に、こういうくだりを見つけたからだ。 米国滞在中の舟橋氏は、「この本はトヨタだ。出版社は、出た本をリコールし、謝罪し、 問題個所を書き直すべきだ」という専門家の声を聞いたという。 米国にとってはトヨタが米国の自動車を凌駕する事を許せないのと同様、米国の原爆投下を 糾弾する作品は許せないのかも知れない。 キャメロン監督には、出版停止の原作を離れて、独自の視点から原爆映画を作ってもらいたい。 キャメロン監督の映画作りを聞いて喜んで死んでいった93歳の男性の鎮魂のためにも。 _________ 天木直人のメールマガジン 2010年3月6日発行 第66号

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