□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年1月13日発行 第13号 ■ ────────────────────────────── 先送りされ続ける核密約調査報告書の公表ー私の視点 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1月12日の各紙は、核密約調査報告書の公表がまた先送りされたことを一斉に報じている。 ほとんどの記事は先送りの事実を淡々と述べるだけであるが、私はこの核密約の調査と公表は 今後の日米同盟関係を占う上で極めて重要な問題であると思っているので、私の考えを三点書い てみたい。 一つは、もはや岡田外相は対米外交の指導力を取れなくなってしまっている、ということである。 周知の通り、核密約調査については、岡田外相自身が就任早々に言い出した事だ。11月中にも 調査結果を公表すると宣言した。 さすがは情報公開と説明責任を党是に掲げる民主党である。 政権についたとたん自民党政権では 決して出来ない事を行おうとした。 私はその岡田外相の英断に驚き、それを高く評価したものだ。 ところがその公表が理由もなく1月に延期された。 しかも外務省の調査結果をそのまま公表するはずであったのに、明確な説明もなくいつのまにか 有識者委員会なる組織をつくり、その委員会に検証作業を丸投げした。 さらに驚いたのが、その有識者委員会メンバーの顔ぶれである。親米保守的な考えを持つ者が目立ち、 おまけにその座長が自民党政権下で重用され続けてきた御用学者の雄である北岡伸一東大教授であった。 岡田外相の変化の裏には、東アジア共同体に米国は含まれないと、言って米国を怒らせ、普天間基地移設 問題の迷走で米国の不信を買ったことがあったに違いない。 米国に嫌われては総理になれませんよと外務官僚に脅かされたかどうかは知らないが、もはや岡田外相は 完全にその指導力を失っている。 そのことによって外務官僚主導の外交が見事に復活しつつある。残念な事だ。 二つ目の視点として、外務官僚による核密約文書の隠滅、という深刻な問題がある。 この点については1月12日の読売新聞だけが次のように書いていた。 「・・・(有識者委員会は)密約の根拠となる文書が多数破棄されていた可能性が高いとの判断に達し、 文書管理のずさんさぶりを報告書で指摘する方針を固めた。ただ、文書は外務省規則に基づいて破棄された とみられ、当時の幹部らの個人的責任については報告書には盛り込まない見通しだ・・・」 つまり密約文書はあったことはほぼ間違いないが外務省のずさんな文書管理のために文書は確認されなかった、 ということだ。 密約が明らかになることを恐れた外務省職員が破棄した可能性は高いが、その破棄は外務省の規則に基づいて 行われたので、個人の責任について問う事はしない、責任者は特定しない、と言う事なのだ。 見事な結論だ。批判の対象を外務省の文書管理のずさんさに集中させ調査の幕引きを終えようとしているのだ。 核密約の存在が確認されれば、歴代の自民党政権や外務官僚が国会で嘘を重ねていた事が明らかになる。国民を 欺いていた事が明らかになる。 これでは外務官僚の背信が浮き彫りになる。外務官僚の言いなりになって嘘をついた政治家の面子は丸つぶれ になる。政治家や外務官僚は売国奴となる。 それを認めて謝罪するという潔さは政治家や外務官僚にはない。そうさせる事はしのびがたい。 だから、密約があったとは決して断定しない。 存在した可能性は限りなくあると思われるが「これがその 文書だ」とは断定しない。あるいは「非公式な文書」、「個人的メモ」などとする。 私がもっとも噴飯ものだと思ったのは、「外務省の規則に従って破棄されたから責任を問わない」という 新聞記事のくだりだ。 私はもちろん知っているのだが、その規則を情報公開させればいい。 それを見たとたんに国民はおどろくであろう。こんないい加減な規則を作って外交機密文書を処理していたのか、と。 後世の歴史家の検証に委ねるために末永く保存されるべき外交文書を、外務官僚だけでつくった規則で勝手に処分 できる、そのこと自体が問題なのである。 第三点は、核密約の事実が明らかになった場合の対応である。 そしてこの対応こそが最も困難かつ重要な問題であり、有識者委員会の腕の見せ所なのである。 なぜならば、核持込の事実が明らかになれば、これまでの日本の政策である非核三原則という政府の方針と 矛盾する。言い換えれば、矛盾するからこそ密約の必要があったのだ。 この点について、有識者委員会は必死になって悪知恵をめぐらしていることだろう。 私が考えるもっともありうるシナリオは、核密約の問題と今後の日米同盟の問題について完全に切り離して 処理する事だ。 すなわち核密約は外務省の文書管理のずさんさを認め、遺憾の意を表明し、再発防止に向けての厳重注意で 終わらせる。 そして、そのような過去の事よりも今後の日米同盟の再構築のほうが重要だ、と強調する。 日米同盟を深化させるためには米国の核抑止力を減ずるようなことがあってはならない。 つまり非核三原則の修正である。 普天間基地問題で負い目を追った鳩山・岡田外交にとって、これを拒む余裕はない。 同時に、これは日米安保50周年を迎えた日米同盟再定義の目玉にもなる。 これと引き換えに、米国が辺野古以外の場所に普天間基地を移転させることを認めてくれればすべて上手く行く。 昨年9月の国連演説で、今後とも非核三原則を遵守すると国際公約した鳩山首相であったが、発言をいとも簡単に 変えるのは鳩山首相の得意技だ。 有識者委員会は、普天間基地問題のゆくえをにらみながら密約調査報告書を考えているに違いない。 この点こそ密約調査報告の公表が再度にわたり引き伸ばされた理由であると私は思っている。 ______________________ 天木直人のメールマガジン 2010年1月13日発行 第13号

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