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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「天木直人メルマガ」2010年1月4日発行 第4号
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□■□■  【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■    天木直人のメールマガジン 2010年1月4日発行 第4号 ■     ──────────────────────────────         ユダヤ教に改宗したかつての友       ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    今日から新年が動き出す。時事問題について書く前に、もう一つだけ、私の個人的な 話におつきあい願いたい。  昨年の11月に「日本人の知らないユダヤ人」という本が小学館から刊行された。  それを新聞広告で知った私は、直ちに本屋で買い求めて読んだ。  ユダヤ教に興味があったからではない。その著者が石角完爾氏であったからだ。  石角はかつての私の高校時代の同級生である。  京都に洛星というカソリック系の私立受験校がある。  私と石角はそこで高校生の三年間をともにした。  まだ洛星校が出来て間もない頃だ。我々は洛星の9期卒業生である。  彼は私に言った。俺と一緒に京大法学部を受験しようと。  志望校を決めていなかった私は言われるままに京大法学部を受ける事にした。  試験が終わった時、彼は私に言った。合格発表日には一緒に見に行こうと。  やめたほうがいい、内心そう思ったが、それを言い出せず、合格発表日に一緒に出かけた。  そこには私の名前しかなかった。  一年後に京大で会おう、石角はそう言って去って行った。  それ以来お互いに連絡することはなかった。  そして一年後、彼は京大法学部に合格し、私に会うや否やこう言った。  お前は外交官試験を受けろ。おれは司法試験を受ける。  そう言って、石角はその日から受験勉強を始めた。  国際私法を専攻し国際弁護士になって金儲けをする、というのが彼の口癖であった。  その時私は大学二年になったばかりだった。  大学の勉強にさしたる興味を持てず、石角に言われるままに外交官試験を受ける事にした。  試験に受かれば米国へ留学できる。それが私をその気にさせた。  私は米国の圧倒的なまぶしさに憧れた団塊世代の一人であった。  運よく三年生の時に受けた試験に合格した私は、翌年大学を中退して上京した。  石角とのつき合いはそれっきりとなった。  風のうわさで彼が司法試験と国家公務員試験に合格した事を知った。  通産省に入ったがすぐにやめ、計画通り東京の国際弁護士事務所で働き始めた。  その事務所の所長の娘を娶って事務所を引き継いだという話も耳にした。  やがて彼の名前がメディアに報じられるようになった。  企業買収などの大きな案件をつぎつぎと手がけ、着実に目的に向かって進んでいるようであった。  そんな石角と私は、30年ほどたったある日、思わぬ場所で再会した。  イラク戦争に反対して外務省から辞職を迫られた私は、有楽町にある外国人特派員協会に呼ばれて 講演をした事があった。  講演が終わって壇上を離れようとした時に近寄ってきたのが石角であった。  蝶ネクタイをした彼は一言次のように私に語りかけて去っていった。  「つまらない事をするより、金儲けしろよ」  それから更に6年余がたち、私は再び石角と出会うことになった。  「日本人の知らないユダヤ人」という彼の著書を通じて。  この本は面白かった。ユダヤ教という宗教の本質を垣間見た気がした。  ユダヤ教がなぜあれほどまでにパレスチナ人を排斥するかがわかるような気がした。  これでは中東に平和は来ない、そう確信した。暗澹たる気持ちになった。  しかし私がこの本の中で一番注目したのは、なぜ石角がユダヤ教に改宗したかということであった。  金銭欲を満たし、もはや他にすることがなくなったからなのか。  あるいは更なる富を求めてユダヤ資本の仲間に入ろうとしたからか。 それはわからない。  彼はユダヤ教改宗の理由をこう書いていた(196ページ)。  「生きる意味を求める心の渇望」、「なにか大きなものにすがりたいという感覚」、「世界の他の人々 と同じように宗教を心の基盤に持ちたいという思い」からだった・・・と  石角は言う。いまやユダヤ教徒となったことで、どんな状況下でも、世界のどんなところにいようとも、 常にヘブライ聖書(旧約聖書)でつながっているという心強さを得たと。  その言葉に嘘はないだろう。  しかし彼の本を読んで思わざるを得なかった。  この本は当然ながらユダヤ教の賛美であり、ユダヤ人の選民思想の弁護である。  そこには被害者、被差別者としてのユダヤ人は書かれてはいるが、パレスチナを弾圧し続ける ユダヤ人の姿は見事に捨象されている。  還暦になってユダヤ教に改宗しユダヤを賛美するかつての友、石角と、外交官人生の最後に中東に 勤務してパレスチナ弾圧を続けるシオニズム知ってしまった私。  我々は残された人生において完全に別の道を歩み始めることになったようだ。  どちらが正しいというものではない。  石角は今でも「かつての友」だ。なんの反感も抱くものではない。  高校生のころ一瞬の間交わった二人の人生が、その後大きく乖離していった、それだけの話である。                      ______________________                       天木直人のメールマガジン 2010年1月4日発行 第4号  

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