□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年1月3日発行 第3号 ■ ────────────────────────────── 土井香苗さんこそ日本の独立外交官になってもらいたい ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 新年だから希望のある話をしてみたい。 もう一年以上も前のことだろうか。 新聞を読んでいて日本人の若い女性が人権問題で 国際的に活躍している事を知った。 その時の印象は、とてつもなく優秀な経歴にもかかわらず、エリート街道を歩むことなく、 ひたすら弱者の味方になって働く道を選んだ「立派な人」というものであった。 それ以来彼女の事はすっかり忘れていた。彼女に関する記事を見ることもなかった。 ところが昨年の暮れに偶然に手にした週刊現代(12月12日号)で、彼女に関するグラビア 写真入の大きな特集記事を見つけた。 間違いなくあの時の彼女だった。 彼女の名前は土井香苗(どい かなえ)。肩書きは国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウオッチ 東京オフィス代表と紹介されていた。 まず驚くのはその経歴のすごさだ。最難関の桜蔭中学・高校から東大法学部へ現役合格。3年生の 時に史上最年少(当時)で司法試験に合格。ニューヨーク大学で修士号を取得て国際弁護士の資格を 持つという。 それだけならば優秀なスーパーウーマンで終わってしまう。 私が驚いたのは、そのような経歴にもかかわらず、彼女が官僚とか政治家とか金儲けのできる 国際弁護士などというエリート街道を目指すことなく、報酬も満足に払えないような弱者のための 人権派弁護士の道を選んだことだ。 そして今ではアムネスティと並ぶ世界最大の国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウオッチに参加し、 その東京代表となって東京オフィスを軌道に乗せる仕事に専念している。 それだけならば、私は愛着を感じない。優秀で立派な人で終わってしまう。 一面識もない私が彼女を信用し、応援したいと思うのは、彼女が涙もろい人であると知ったから である。映画を見ても、法廷でも、すぐ泣くという。 それでいて強さがある。「弾圧をしている側を懲らしめるのも、弱者救済になるんですよね」、と 善意の発想だけでは限界があると言い切るプラグマチストでもある。 週刊現代はこう書いている。 「弱者の叫びに共振してしまう感受性。これも一つの才能とみなすなら、土井は難民救済や人権保護 への道へ入るべくして入ったと言えるだろう・・・」 驚く事はもっとある。次のような彼女の言葉だ。 「(ヒューマン・ライツ・ウオッチは)援助団体ではなくシンクタンクに近い存在です。世界70余国 の人権状況を監視して、改善を求める。その国にプレッシャーをかけるためには、先進国に政策提言したり、 国連決議を作ったりもする・・・情報の質と量がすごい。情報で政府を上回れなければ、説得なんて不可能 ですから・・・」 これはまさしく「国家の外交では正義は実現できない」、と英国外務省を辞めて独立外交官になった カーン・ロス氏と同じ考えだ。 活動資金を寄付で集めること、その寄付集めに苦労している事なども同じだ。 私が彼女の言葉の中で最も注目したのは、日本政府(外務省)が、「たかがNGO」という態度で冷たい と次のように語るくだりである。 「外務省に行っても、『あんた誰?』みたいな感じ(笑)。『なんでNGOに教えをこわなきゃいけないんだ』 という気持ちもあるでしょうし、世界のヒューマン・ライツ・ウオッチで、私が一番高い壁に直面している・・・」 この言葉の持つ意味は重要である。 日本の官僚は、キャリア試験に合格したというだけで、それ以上の能力もなく、質の高い仕事をしているわけ でもないのに、権力の上にあぐらをかいて税金と情報を無駄に使ってきた。 その一方で、どんなに質の高い、こころざしの高い仕事をしていても、民間人というだけで見下されてしまう。 それが日本の現状である。 週刊現代は次のように締めくくっている。 ・・・NGOが「エリートの憧れる就職先」になったとき、日本社会は確実に変わる・・・ その通りだと思う。 人の活動が正当に評価され、その活動に正当な対価が払われる社会の実現。 言い換えれば、あまりにも不合理、不正義な形で特権や利権を政治家や官僚が結託してむさぼってきた。 それを根本的に破壊する。公正、公平な社会をつくる。 これこそが民主党政権の大きな仕事の一つではなかったか。 政権をとったとたんに保身になり、官僚的になりつつあるところこそ、今の民主党の大きな問題だと思う。 ______________________ 天木直人のメールマガジン 2010年1月3日発行 第3号

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