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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「天木直人メルマガ」第2号 明治の時代がとりたててよかったわけではない
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□■□■  【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■    天木直人のメールマガジン 2010年1月2日発行 第2号 ■     ──────────────────────────────         明治の時代がとりたててよかったわけではない       ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    NHKの連続ドラマ「坂の上の雲」がしきりに宣伝されている。  司馬遼太郎のこの作品は、その発表以来多くの読者の心をとらえ、これまでにも何度も ドラマ化されてきた。  それがなぜ今再び大きくとりあげられるのか。  それは、おそらく閉塞感の覆う今の日本にあって、国家の夜明けをえがくドラマが日本人の心を とらえるだろうと期待されてのことだろう。  このようなNHKの目論見に対し、批判の声が起きている。  ミリタリズムを鼓舞しようとしているのではないか。 それをおそれた原作者の司馬遼太郎 本人が映像化を拒んでいたではないか、それを無視したNHKは許せない、などなど。  司馬遼太郎の作品自体が歴史の偽造に満ちている、という酷評さえ見られる始末だ。  私の立場はそのいずれでもない。  史実を正確に知ることは重要だ。これは私がいつも強調しているところだ。  だからといってこの作品が宣伝されることが危険であるとか、歴史捏造だと騒ぐつもりはない。  重要な事は、自分自身が正しく歴史を捉え、正しい考えを持つように努力することである。  もちろん何も知らない子供が間違った事を教えられ、それを鵜呑みにする危険性はある。  しかし子供は大人になって賢くなり、自分で学び、自分の考えを持つ。  子供のままに大人になってしまい、その考えが進歩しないことこそが問題なのである。  「坂の上の雲」は、およそすべての歴史小説、ドラマがそうであるように、一つの作品である。 それを楽しめばいいのだ。感動すればいいのだ。  私は子供の頃に親から教わった軍歌が好きだった。 そこには心を鼓舞するものもあったが悲しいものが多かった。感動的なものが多かった。  その軍歌の数々は、今になって私に強い反戦の気持ちを与えてくれていると思う。  すべては自分自身がしっかりしていればいいのだ。   歴史を正しく知ろうと謙虚に努力し、異なった意見や見方さえ自分の血肉にするしたたかさを 我々は持つべきだ。  前置きが長くなったが、今日のメルマガでどうしても紹介したい文章がある。  私が住んでいる栃木県の地方紙である下野(しもつけ)新聞の元旦号に歴史作家である半藤一利氏 と、同じく作家の沢地久枝さんの対談記事があった。  その中で半藤一利氏は次のように日本という国を語っていた。沢地さんの相槌も絶妙だ。  半藤「・・・『幕末史』という本を書くため、明治とは何かを調べた。学校では戊辰戦争が終わって 明治という良い時代が来たと習ったが、実は大変な時代だと分かった・・・今、日露戦争の後の時代を 調べているが、このころ日本は急に悪くなってくる。出世主義に学歴偏重、金権主義。明治の終わり には爵位すら買えた。それとまじめさを失った享楽主義。実は戦争に大勝利ではないのに、政府が その事実を隠さざるを得なかった。本当はアメリカに仲介してもらって講和にこぎつけたのに、莫大な 税を徴収して軍備を拡大しなくてはいけないものだから、勝ったことにしておく必要があった。上が 一番大事な事を隠すと、国民全体が悪くなると思うのです・・・」  澤地「・・・日露戦争では、ロシア本国は傷ついていないし、兵員も砲弾も十分あった。一方で、 日本は底をついていた・・・あれ(日露戦争)から(日本は)どんどん狂っていったのね・・・」  半藤「・・・貿易などを中心とする『小国主義』で十分いけると言う人はたくさんいたし、日本は 軽武装でひっそりと生きていけばいいという考え方もあった。でも大国を選択した。それから大国主義的 な考え方が(ひろがり)今日までずっと続いています・・・」  澤地「大国なんかにならなくてもいいのに、錯覚した・・・一番危ないのはそこです」  半藤「・・・中国との関係で言うと、日清戦争で日本の近代軍隊が、軍隊とはいえない清国と 戦って勝った。あれ以来、ずっと日本人は中国に対して侮辱感を持ち続けている。(蒋介石と 毛沢東が手を結んだという)西安事件の時を調べてみたが、日本陸軍も世論も中国をまったく馬鹿に しているんですよ・・・共産党と国民党が合体したってすぐに分裂抗争すると思っている。中国の事を きちんと調べて勉強した人は一人もいないんですよ・・・」  澤地「中国兵はすぐ逃げていくと。ところが最近、火野葦平の兵隊三部作や林芙美子の従軍記などを 読み返してみると日本軍は苦戦している。そんなこと教わりましたか」  半藤「いえ、子供のころは教わりません。それどころか『連戦連勝』でしょ」  澤地「戦争というとアメリカとの戦争の話ばかりですが、本当は中国と日本の関係のほうが重要 ではないか。いまやもう、日米軍事同盟という時代は終わったんじゃないかと私は思う・・・」  半藤「日米同盟だけで世界をリードしていく時代じゃないですね・・・1933年に国際連盟を 脱退して以来、日本人は外交をしていない。戦争に負けてから数年間は占領下だったし、その後 独立したと思ったとたんに日米安保条約が結ばれ、いつの間にかアメリカの核の傘の下とかで 自主外交はなかった。その間にどれくらい(米国との間で)密約や国民に隠していることがあるのか ・・・」  私が半藤氏の言葉の中で特に注目したのは次の言葉である。  「・・・私は団塊ジュニアにこわい人が多いと思う。彼らは激しい競争社会の中で大学に入り、 卒業したら就職氷河期でフリーターになった。それなら戦争でも起こして戦うんだと言う人がいて、 それに賛成する人もたくさんいる。これから社会の中堅になる人たちが一番絶望して、日本に 嫌気がさしています・・・」  「坂の上の雲」が喧伝されることの危険さは、そのドラマにあるのではない。  そのドラマを正しく鑑賞できない史実の欠如であり、史実を知ろうとする余裕さえなくなった 将来を担う世代の存在であるような気がする。  そのような団塊ジュニアを送り出し、彼らに正しい世の中を作ってやることの出来なかった われわれ団塊世代の責任は大きい。                         ______________________                        天木直人のメールマガジン 2010年1月2日発行 第2号  

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