… … …(記事全文5,424文字)こんにちは、吉野愛です。
今は亡きパトリック・スウェイジとジェニファー・グレイ共演の映画『Dirty Dancing(1987)』は、現代版ロミオとジュリエットのような身分違いの恋愛話の映画ですが、ダンス好きな母のお気に入りの映画の一つです。実はこの映画の主人公たちの「身分違い」の設定は「金持ちの娘と雇われダンサー」以外にも「ユダヤ教徒と非ユダヤ教徒」という構図にあります。
タルムードには婚姻もユダヤ教徒同士だけと厳しく書かれています。ですから結婚=契約要素の強いユダヤ教徒は、横のネットワークを広げるためにも、親は自分の息子や娘にできるだけ「医者の息子」とか「弁護士の娘」などを見つけてきてもらいたいのです。そんな裕福層の有望株と知り合いになるために、夏休みを利用して家族で「サマー・キャンプ」に行きます。そう、この映画の舞台はニューヨーク州のキャッツキル という典型的なユダヤ人が集まる避暑地です。
基本的に女性がユダヤ教徒の場合、結婚相手の男性が非ユダヤ教徒でも女性の親は意外と認めてくれます。しかし男性がユダヤ教徒の場合、結婚相手の女性が非ユダヤ教徒であると、親は泣き崩れ罵り断固として認めないか、または結婚を認めてもらうために花嫁がユダヤ教に改宗するケースが多いです。米人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』でも、シャーロットが改宗する場面が出てきますし、イヴァンカ・トランプさんもジャリッド・クシュナーさんと結婚するためにユダヤ教に改宗しました。
イスラエル政府は帰還法の条件としてユダヤ人を「ユダヤ人の母から産まれた者」と定義しました。一般的に父子という男系を重視する文化の多い世の中で、なぜ彼らはあえて母親の血筋を重視するのでしょうか?イスラエルは「宗教」を要にした新興国です。帰還法をユダヤ人の母から産まれた者と特定したのは、イスラエルに移民する人口を抑制するという政治的な理由であるかと思います。
目次
● 変化する西アジアの安全保障
● パレスチナは独立するのか
● イスラエルとパレスチナ ー 感情論ではなく事実を辿れ
未来への羅針盤
吉野愛(文筆家、国際政治研究者)