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稲葉義泰のミリタリーレポート ─軍事と法から世界を見る─

稲葉義泰(国際法・防衛法制研究家/軍事ライター)

稲葉義泰

軍艦と無害通航権

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00255/20220930211815100095 //////////////////////////////////////////////////////////////// 稲葉義泰のミリタリーレポート ー軍事と法から世界を見るー https://foomii.com/00255 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●軍艦と無害通航権●  各国の領海においては、他国の船舶等が一定の要件の下で自由に航行することが許されています。これが「無害通航権」です。そして、この無害通航権に関して国際法上議論があるのが、民間船舶などと同様に軍艦に対しても無害通航権が認められるのかどうかという問題です。歴史的には、航行する船舶の種類やその装備、航行目的などに着目して、軍艦などに対しては無害通航権が認められないとする「船種別規制」の考えが有力視されていた時代もありましたが、特に第二次世界大戦後からは無害性の有無に関してこれを船舶の種類ではなく、たとえば軍艦が戦闘態勢をとりながら領海内を通航しているかどうかなど、個々の船舶の航行態様(航行の仕方)に基づいて判断する「態様別規制」の考え方も支持を集めています。  この点に関して、国際的な海洋に関する権利や義務等を定めた国連海洋法条約(UNCLOS)第19条2項では、無害でない通航にあたる具体的な行動が12項目にわたり列挙されていますが、これはこの態様別規制の考えに沿ったものであると考えられます。しかし、問題は19条1項の規定です。19条1項では、「通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる」と規定されていますが、ここに船種別規制の考えを読み込むことができる余地があるのか、それともやはり態様別規制の考えに沿ったものと解釈するべきかという対立が、国際法学者や各国の間で存在しています。  前者の考え、つまり19条1項に船種別規制の考えを読み込む解釈を採用している国は、他国軍艦の自国領海内の通航に関して、その事前許可や事前通告を要求しています。一方で、欧米先進国を含む多数の国では、19条1項に関しても態様別規制に沿った解釈を行い、他国軍艦による自国領海の通航に関して特段の規制は設けていません。  日本も基本的には態様別規制の考えを支持していますが、ただし、非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)に則り、核兵器を搭載する軍艦については日本の領海内における無害通航を認めないという立場をとっています。たとえば、1975年(昭和50年)2月13日、当時の宮澤喜一外務大臣が次のように答弁しています。 「核常備艦はもとより、核積載の可能な、可載艦がたまたま核兵器を持って領海を通るというような場合には、それはいわゆる無害航行ではない、わが国としては非核三原則を持っております以上、わが国の平和と安寧にそのような行為は重大な関連があると考えまして、そのようなものは無害通航とは考えないという方針をとっておるわけでございます」(第75回国会 参議院 外務委員会 第3号 昭和50年2月13日 宮澤喜一外務大臣答弁)
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