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マスコミに騙されないための国際政治入門

白川司(評論家・翻訳家)

白川司

ペロシ議長はなぜトランプ大統領演説の写しを破いたのか?
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ウェブで読む:https://foomii.com/00184/2020020619000063418 //////////////////////////////////////////////////////////////// マスコミに騙されないための国際政治入門 https://foomii.com/00184 //////////////////////////////////////////////////////////////// いわゆるウクライナ疑惑についての弾劾裁判がやっと終わり、トランプ大統領は無罪が確定しました。 ところが、トランプ大統領の弾劾裁判無罪を受けて、アメリカ下院のナンシー・ペロシ議長(民主党)が非難声明を出しています。「トランプ大統領と共和党は不正を普通のことにしてしまった」だの、「証人のいない裁判が認められるわけがない」だの、「共和党は証拠を握り潰して、公正な裁判の手続きに不備をもたらした」だの言いたい放題の暴論です。 なぜ、暴論といえるか。 そもそもトランプ大統領は不正などやっていません。民主党のジョー・バイデンが不正をやっていないか調べてみてくれないかとウクライナ大統領に言っただけです。自国の政治家が外国で不正をやっている疑惑があれば、それに触れることなどごく当たり前のことです。 しかも、ウクライナ大統領は「特に交換条件など出されなかった」と証言しています。当事者が疑惑を否定しているのに、第三者がそれ以上何か言って意味があるのかどうか。 また、「共和党は証拠を握りつぶした」も明らかに嘘。証拠を審議するのは下院で、証拠を出さなければいけなかったのは弾劾を提起した民主党です。それができなかったのだから、共和党を批判するのはお門違いです。 そもそもこの弾劾は、民主党下院のアダム・シフが「有力な証拠がある」と言って始めましたが、その言い出しっぺが「有力な証拠」を最後まで出すことがありませんでした。彼は明らかに嘘を言ってこの弾劾を始めたのだと私は思います。とにかく弾劾したかったのでしょう。 ペロシ氏の批判はすべて難癖にすぎないのです。 しかも、ペロシ氏は、トランプ大統領の一般教書演説で、最後に写しを立ち上がって破いて見せるというパフォーマンスまでやっています。 思い通りにいかず腹がたつのは理解できますが、ここまで不遜なことをやっていのかと呆れる思いがします。    ※ ただし、私たちが留意しなければならないことがあります。それは、ペロシ氏は決して変な政治家などではないということです。むしろ優秀な政治家だと言うべきでしょう。とくに、左右に分断されて、能力もないはねっかえりだらけの若手が暴れ回る中で、なんとか民主党をまとめ上げている手腕はもっと評価されるべきです。 ペロシ氏は民主党の典型的な「老害」のように描かれることもあるのですが、今の民主党をまとめられて、なおかつ大統領選挙に出ない下院の政治家というと、現実問題としてペロシ氏くらいしかいないのではないかと思います。 では、なぜペロシ氏は、議長という重職にありながら、一般教書演説の写しを破くなどといった暴挙に出たのでしょうか。 そもそも、ペロシ氏はこの弾劾裁判には反対の立場でした。明確に反対だと言ったことはありませんが、実際、弾劾の動きをなんとか抑え込もうとしていました。 彼女は経験豊かな政治家ですから、弾劾でトランプ大統領を有罪にすることなど不可能であり、弾劾することでむしろトランプ大統領の再選の可能性を高めてしまうことがわかっていたのです。 でも、「トランプを弾劾せよ」という民主党の盛り上がりにあがなうことはできませんでした。となると、この弾劾をなんとかトランプ再選阻止に利用するしかないと踏んだのでしょう。 ところが、前回のロシア疑惑にくらべると、マスコミがさほど盛り上げてくれませんでした。 さすがにロシア疑惑が茶番であることを気づいた国民が多く、マスコミもそれで一部で責められていました。今回は手放しで民主党側を応援するいかなかったというのはあるのでしょう。 実際、下院ではさほど盛り上がることなく終わりました。なにしろ、悪口は出るが、証拠は出てきませんでした。 唯一の証拠であるウクライナ大統領との電話の音声をいくら聞いたところで何も出てくることはありませんでした。上院でも「トランプ大統領に解任されたジョン・ボルトン元安保補佐官が証言するのではないか」というネタで盛り上がったくらいです。 ペロシ氏は、上院にあげる時期を大幅に遅らせました。おそらく民主党の選挙と、トランプ大統領の一般教書演説にぶつけようとしたのでしょう。トランプ大統領が弾劾されることはないにしても、ボルトン氏が証言してくれればいくぶんか足を引っ張れると計算したのではないでしょか。 残念なことに、共和党の離反はごくわずかで、ボルトン証言は実現しませんでした。 そうなると、最初に懸念したように、この弾劾裁判はトランプ大統領の再選に大きなプラスになってしまうことになります。 そこで、ペロシ氏は一般教書演説に賭けたのでしょう。 トランプ大統領が次々と繰り出す実績の自慢を「すべて嘘っぱちだ!」と叫ぶことで、再選に一気に流れることを阻止しようとしたのだと思います。 したがって、「トランプ大統領がペロシ氏の握手を拒否して腹をたてたから」という話は、全くないということはないにしても、さほど大きくないと思います。それよりは、「トランプ大統領の大げさな自慢に腹をたてて」と演出しようと狙ったのでしょう。 なにしろ、この一般教書演説を認めるということは、「オバマ政権が間違っていた」というトランプ大統領の考えを認めることになります。 しかも、今回の民主党で最有力のバイデン氏はオバマ政権で副大統領をやっていたわけですから、「弾劾無罪→一般教書演説」の流れはなんとか断ち切るしかなかったのです。 これで、反トランプ派は「やっぱりトランプは嘘ばっかり言っていたのか」となったはずで、支持層離れを防ぐことに多少なりとも貢献したと思います。 最後に私の評価です。 ペロシ氏はよくやっているのですが、トランプ大統領の敵ではありません。彼女が不安に思っていたとおり、この弾劾でトランプ大統領の再選の確率は大きく上昇したと思います。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら   info@foomii.com ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////

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