2月12日深夜、米ロ首脳による緊急の電話会談が行われた。それに先立って11日にはサリバンの会見があり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が「いつ始まってもおかしくない」と警告、ウクライナに滞在するアメリカ人に対して48時間以内の退避を呼びかけた。また同時並行して、西側メディアが「プーチンがウクライナ侵攻を軍に命じた」というCIAからの情報を流し、日本でもテレ朝などが同じ報道を行った。CIAの情報では戦争勃発は16日(水)だと言う。世界の週末が緊張した空気に包まれた。 ロシア側はこの情報をデマと否定。米ロ首脳会談終了後の発表も、いつもと同じような調子の文言が並び、懸念と不満の応酬と対話継続の結論で纏められたものが出た。が、バイデンは11日に行った欧州各国首脳とのテレビ会議で、やはり、16日にもロシアが攻撃を開始するだろうと観測を伝えている。また、サリバンは会見で、ロシア軍がキエフを急襲するという見方を示していた。11日、ポーランドに3000人の空挺部隊を追加で派遣するという報道が、国防総省高官からの発信としてNHKから伝えられた。 何が起きたのか。私の分析は、米国側の戦争準備が万全に整い、いつでも作戦決行できる態勢になり、プーチンに対して最後通牒を突きつけたという解釈である。今すぐ撤退を決断して国境から引くか、それとも侵攻して戦争に突き進むか、二者択一せよと会談で迫ったと思われる。62分間の会談の中身は、報道発表ではオブラートに包まれている。そこは推理と検討を必要とするところだが、重要なのは、昨年末以来40日ぶりに行われた12日の首脳会談が、アメリカ側から求めてロシア側が応じたという経緯の点だ。 アメリカ側が伝えたい話(=弾=狙い)があり、この会談をセットしている。アメリカの方に目的があり、ロシアは受け身で聞いている。そして会談の結果が、ロシアがあらためて対応の返答をするという形に終わっている。外交上のキャッチボールの形式は担保されているが、これはロシア側が相当に追い詰められた内実を示唆している。一寸待ってくれ、返事するから時間をくれ、と弱気になった関係性が看て取れる。バイデンがかなり強烈な直球を投げ込み、プーチンが狼狽して劣勢に立った状況が推察される。… … …(記事全文3,994文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)