昨夏の東京五輪のときと情景がよく似ている。あのとき、第5波の感染が拡大し、自宅療養者が溢れて死者が次々と出た。政府と自治体は棄民政策を遂行していた。被害が深刻化しているのにマスコミは正しく報道せず、東京五輪の「熱狂」ばかりでテレビを埋めていた。今回は第6波と北京五輪が重なっている。ワイドショーは第6波の現場を取材せず、五輪の日本人選手ばかりを追って映している。NHKと民放の夜のテレビ報道は、北京五輪に難癖をつけて貶める x minutes china hate を毎晩流している。 昨夏は東京五輪を賛歌するプロパガンダだった。今冬は北京五輪を悪罵するプロパガンダだ。そこに視聴者国民の関心を押し向け、第6波の真実から目を逸らさせている。マスク(遮蔽)している。そのため、オミクロン株の脅威が国民の中に伝わらない。統計を確認すると、2/5の死者数は117人で、第5波のときの9/8の89人を超えている。死者数はこれから増加し、第5波を圧倒する規模の惨禍となるに違いない。だが、社会に緊張感と警戒感がまるでない。増幅し沸騰しているのは中国への敵意と憎悪だけだ。 2月6日、横浜市の介護施設で7人死亡したという報道が出ている。が、6日は日曜日で、翌7日のモーニングショーでも話題にならなかった。おそらく、神奈川県とマスコミは、わざと日曜に小さな報道に収まるよう細工したのだろう。記事を見ると、7人は3日から5日にかけて死亡していて、死因は「呼吸不全」とされている。実際は肺炎だろう。肺炎と診断しないのは、本当はコロナの重症患者だったのに、入院させてなかった神奈川県の不作為と失態が露呈し、責任を問われるからだ。7人の高齢者は見殺しにされたのだろう。 神奈川県が出した「自主療養」の新対処方針には、「限られた医療資源をリスクの高い方へ重点的に提供したいと考えております」と書かれてある。このことは、1月28日に報ステに生出演した阿南英明(県医療危機対策統括官)が明確に述べていた。50歳未満を「自主療養」にし、医療提供から切断して自宅に押し込めたのは、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を持った者の命を守るためだった。それが理由で大義名分だった。だが、そこから10日も経ってないのに、高齢者施設で7人もコロナで亡くなっている。病院にも入れずに。これはどういうことなのか。 7日の記事を見ると、神奈川県の病床使用率は63.5%で、重症患者用の病床使用率は32.8%という数字が出ている。県全体では病床に3分の1の空きがあり、重症病床では3分の2の余裕がある。そう報告されている。なぜ、この高齢者施設の7人は病院搬送されず、救命治療を受けられなかったのだろうか。そもそもPCR検査は事前にされていたのだろうか。「呼吸不全」になる前に、県(統括官)の手配でブースター接種を受けられなかったのか。疑問は残る。いつも思うことだが、神奈川県議会の野党はどういう質疑をしているのか。カナロコの記者は定例会見で何を質問しているのか。… … …(記事全文3,125文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)