1月15日のTBS『報道特集』で、あしなが育英金と奨学生家庭の困窮実態について放送していた。とても重い内容で、番組を紹介するのも、感想文を書くのも心に力が要る。TVer に録画が上がっているので、見逃した方はご覧いただきたい。あしなが育英会が昨年10月から12月にかけて調査したところ、奨学金を受けている高校生の保護者4000人のうち、「収入がない」と答えた人が27.6%いて、コロナ前より7.4ポイント増えていた。 平均月収は10万6400円で、コロナ前より1万円減っていた。19.5%がコロナで離職・転職を余儀なくされ、その半数が雇い止めに遭っていた。コロナ後、あしなが育英会に奨学金を求める学生が急増し、2019年度は6500人だったのが2021年度は8300人になっている。その一方で、育英会に入る寄付金は減少し、2019年度は46億円だったのが2021年度は28億円にまで減った。育英会の経営は危機に瀕している。育英会会長の玉井義臣と膳場貴子のインタビューのやりとりが印象に残った。 膳場貴子が「これ、どうやって寄附を募って増やしていこうと考えてらっしゃるんですか」と無神経に質問したのに対して、86歳の玉井義臣が少し間を置いてこう答えた。「ありません。それはないですよ。世の中全部貧乏になっているときに、金出してやってくれと言ったって」。それに対して膳場貴子がどう反応したかの映像はない。場面が切れた。玉井義臣は柔和な表情と言葉を保っていたが、膳場貴子の意外な質問に対して困惑し、神経を逆撫でされたように感じている雰囲気が看て取れる。 どうしてそんな質問が発されるのかという反発の意識が滲み出ている。膳場貴子の質問が、何か寄附を増やす方策や妙案 - 行政のスキームやネットの技術を活用した - があるのではないかという意味に聞こえるし、あしなが育英会が知恵がなく努力不足だと言っているように聞こえる。膳場貴子は、玉井義臣がこうした反応を返すとは想定してなかっただろう。東大出・NHK出の膳場貴子には、どこか半官僚然としたネイティブがあり、インタビューも理事長だの学者だの官僚だのの偉いさんばかりを相手にする。東大出の爺さんが登場する。… … …(記事全文2,442文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)