紅白歌合戦で藤井風という新しい歌手が登場して活躍していた。才能の塊のような音楽家で今後が楽しみだ。24歳。長身でルックスもいい。個性的な喋りとピアノ演奏のハイテンションにモーツァルト的な天才を感じさせる。故郷である岡山の里庄町を宣伝していたところもいい。無条件で好感が持てる。岡山城東高校へは岡山駅を東に超えて3つ目の駅で降りないといけない。里庄は県の西の端の笠岡の一つ手前。高校通学はかなり大変だっただろう。 この青年を気に入ったのは、音楽の内容ではなく、彗星の如く現れてスターダムにのし上がった登場の仕方である。YouTube から出てきた。才能一本。実力一本。コネなし。親の七光りなし。業界の配膳なし。業界への忖度なし。素晴らしいことだ。インターネットの真価が発揮されており、音楽の本来的な姿が生きている。音楽はこうあるべきだし、インターネットはこう使われないといけない。これこそが理想的なあり方だ。藤井風は初出場で紅白に出て一気に主役の座を奪った。視聴者の心を鷲づかみにして国民的歌手になった。希望を感じる成功劇だ。 社会批評や政治理論や社会科学の世界でも、こうしたことが起きて欲しいと思う。せっかくインターネットの基盤が準備されているのだから、ブログというツールを活用し、才能のある者が一躍奮起して評価を獲得し、有力な言論者となって世の中を動かしてもらいたい。今のアカデミーは堕落と劣化の極みにあり、官僚化とサラリーマン化と世襲貴族化の泥沼で腐り澱んで饐えている。無能ばかりが卑しく我欲に蠢いている。霞ヶ関と同じ。人材が出る余地はない。マスコミも同じ。 最近、朝日新聞をほとんど読まなくなった。購読しているけれど読んでない。読むほどの中身がない。購読をやめない理由は、一応、ブログを書いている立場上、新聞の紙面チェックが必要な場合があると考えるからだが、今はそれも必要とは感じなくなってきた。朝日の朝刊の料金は月額3500円である。高すぎると思う。朝日への信頼が決定的に墜ちたのは、津田大介を論壇時評に就かせたときである。驚いた。あまりに読者をバカにした人選で話にならない。一般の中高年読者の方が津田大介よりも知識と知性が上である。あり得ない決定だ。… … …(記事全文2,982文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)