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世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

「所得倍増計画」と「一億総中流社会」が政党の看板に – 清算される新自由主義

自民党が「令和版所得倍増計画」を言い、立憲民主党が「一億総中流社会の復活」を選挙公約のスローガンに掲げた。率直なところ、勝利感ひとしおで興奮する気分を否めない。ようやく、自分が主張してきた政策思想が社会の本流の位置に来た。私の持論がこの国の圧倒的多数の信念と展望となった。与野党が同時にこのフレーズを掲げた意味は大きい。特に、立憲民主党が「一億総中流社会の復活」を訴え始めた点は、まさに現代日本のイデオロギーの転換を象徴する画期的な事件だろう。 「一億総中流社会の復活」という標語は、70年代から80年代の日本の経済社会を肯定する認識が前面に打ち出されている。すなわち、今の日本国民の多数が当時の日本社会へのノスタルジーを強く持ち、その復活を希求している状況が分かる。そのニーズが反映されている。国民は嘗ての「一億総中流社会」の表象と実体を価値として積極的に認め、それを再現する政策的方向性を選択しようとしている。そのことが証明された。そうでなければ、選挙を前に政党がこんなスローガンを掲げることはない。 立憲民主党は、もともとネオリベラルを原点とする政党であり、ファウンダーである前原誠司に特徴的であるように、戦後日本の「護送船団方式」を否定するところから出発した政党だ。自民党と社会党が作ってきた戦後日本システムからの脱却を言い、自由で自立的な、米国型の社会システムを理念として訴えていた。それを横からパクったのが小泉構造改革で、すなわち、民主党と自民党は二党で新自由主義の競争を演じ合っていたのである。民主党には過去のしがらみがなく、ピュアに新自由主義のカラーを打ち出していた。 そのネオリベの民主党を支持し、正当化する理屈を提供していたのが、私が脱構築主義と呼ぶ左派のイデオローグの一団である。上野千鶴子、内田樹、田中優子、小熊英二、湯浅誠、本田由紀らだ。彼らは、竹中平蔵の露骨なネオリベ政策思想を口では批判しつつ、しかし、戦後日本が築いてきた諸制度を壊すことには賛同し加担してきた。一億総中流を過去の遺物として嫌忌し、終身雇用制を貶下し、護送船団方式を悪罵してきた。
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