Foomii(フーミー)

世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

第5波は誰が止めてくれたのか - 墓標の前に祈りを、涙を、人災の検証を

なぜ8月下旬から感染者数が減って、第5波が下降する局面に入ったのか。その変化の要因となったものは何か。今週のテレビ報道では、そのことが、特に深い分析や省察もなく、掘り下げた鋭い問題意識もなく、軽い挨拶代わりのトークとフレーズで喋々されている。感染波も5度目となり、みな慣れきって、コロナをめぐる言説や議論は日常ルーティンに溶け込んでいる。松本哲哉と松原耕二のコロナ漫談に典型的な、まるで意味のない、時間つぶしの、無害で当たり障りのないBGMの進行になっている。 災害の危機が去った安堵感が先行して、関心が他に向かっている。だが、第5波を止めたものは確かにある。それは、ひなた在宅クリニックの映像だ。死んで行った自宅療養者たちだ。ひなたの動画がテレビ報道の主役となったのは、8月16日の週と8月23日の週で、衝撃を受けた国民全てが凍りついた。一粒の麦落ちずば。糖尿病の合併症で瀕死の身ながら入院拒否された55歳の男性、年齢でトリアージされた80歳の独居男性、柏の赤ちゃん。一つ一つの命が、尊い犠牲が、盾となって残りの日本人を守ってくれた。 25条もなく、国民皆保険もなく、丸裸になった庶民の命を、神に召された彼らが守ってくれた。貧窮問答歌を絶唱した憶良のような心持ちで、淋しく哀しく、堪えがたく、濁る怒りを腹蔵に沈ませてそう思う。死んで行った者たちの墓標に手を合わせ、われわれはもう少し、彼らに心を寄せ、言葉をあてがう時間を作るべきなのではないか。小学生が夏休みの宿題で読書感想文を書いて提出するように、彼らの命の刻々を見つめ返し、非業の過程を整理し、その死に報いる心構えをを持って、国民として感想文を書いて捧げるべきではないか。 彼らはなぜ死ななければならなかったのか。そこには何の過失も責任もなかったのか。一つ一つの命を、所管し担当した保健医療当局はどう事案を報告し総括されているのか。NHKはそれをNスペの番組で検証し説明すべきではないのか。警察の発表では、8月は全国で250人が自宅療養中に死亡している。そして、そうしたトリアージの選別死が冷酷に行われる中、JCHO系の病院でコロナ患者用の病床が30-50%空いていたという批判が上がっている。250人は収容できなかったのか。
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