自民党総裁選。河野陣営について気づかないといけない点がある。河野政権が誕生した場合、それは第2次菅政権だということだ。思い出してもらいたいのは、8月30日から一週間の過程で起きた政変で、菅義偉が解散に討って出ようとして失敗した権力闘争劇である。安倍・麻生に鎮圧された。このとき菅義偉が腹に矯めていた構想が、石破茂を幹事長に、小泉進次郎を政調会長に、河野太郎を官房長官兼ワクチン担当相に据えるという改造人事の打ち上げで、マスコミと世論を沸騰させ、瞬間風速の高支持率をもぎ取り、旋風を起こして総選挙に圧勝するという戦略だった。 シナリオを描いて背後で嗾けていたのは軍師の橋下徹。菅義偉の腹心で政局工作の参謀である。田崎史郎が、あの週、小泉進次郎が何度も何度も菅義偉に諫言して、解散を思い止まらせたのに、翌日になったらまた解散に前向きになっていて、おかしい、誰に相談していたんだろうと解説していたが、それは橋下徹のことだ。強気一辺倒の強行突破策を指南し、最後の最後まで、強力に煽って粘って口説いていた。オレがテレビで喚いて勝たせるからと。 河野政権が誕生した場合、首相が河野太郎、幹事長が石破茂、そして官房長官に小泉進次郎が座り、おそらく、副総理で菅義偉が要職に復権するだろう。何かの担当相を持ち、官邸詰めの副総理として内閣の実権をふるうに違いない。二階俊博は副総裁。菅義偉が解散戦略に出たときも、二階俊博にはこのポストが約束されていたはずだ。一見して、河野新政権が第2次菅政権だということが分かる。同じ陣容なのだ。河野太郎は菅義偉によって引き立てられ、日の当たる場所で活躍させてもらって実績を上げ、マスコミの注目を過剰に浴びるキャラになった政治家である。 神奈川コネクションの陣笠であり、菅義偉は恩義のあるオヤジ(育ての親)に他ならない。イデオロギーも同一同類であり、したがって政策も、菅政権の路線と変わらず、菅義偉のネオリベ政策をそのまま引き継ぐのは間違いない。菅義偉の「自助・共助・公助」の政策を指導し方向づけていたのは、誰もが知るとおりブレーンの竹中平蔵だったが、実質的に、河野新政権は頭を挿げ替えただけの菅政権の延長となり、竹中体制(電通・パソナ体制)が盤石で続くことになる。… … …(記事全文3,754文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)