9日夜の報ステで、午後9時半頃の映像として、麻生太郎がぶら下がり取材のカメラの前に立ち、総裁選の対応について発言する場面があった。岸田文雄を支持する意向だと(報道原稿が)述べていた。この映像は一見して奇妙で、午後9時半なのに麻生太郎が昼間のようなスーツ姿で両手に書類を持っている。まるで財務省内でインタビューに応じているかの如き絵柄だ。背景のベージュ系の壁の色調は、ニューオータニ・ガーデンコート館のロビーのようにも見える。 あの場所はいつも政治家がうろうろしていて、玄関から車に乗り込む手前で記者団に囲まれる。政治ニュースの馴染みの現場だ。この稿を書いている現時点で未だ田崎史郎の「解説」に接してないが、派閥幹部と対応を協議していたのだろう。そして、自身が岸田文雄支持であることをマスコミに披露し、党内と世間に拡散させようと図ったのだろう。神奈川新聞の配信では、これが派閥会合であったと説明した上で、麻生太郎は「(対応を)熟慮する」と言っただけだと書き、岸田文雄支持の意思を記事にさせていない。 解読するなら、おそらく麻生太郎は、昵懇の関係にあるテレ朝記者に「岸田支持」を放送するよう差配し、親密ではないカナロコの記者には何も意中を語らず、出席議員を通じて、派閥と自身の公式見解である「熟慮中」を書かせたのではないか。公式には未定で、派閥として岸田支持で纏めて無理に全体を引っ張ることはしない。派閥が割れる混乱と騒動の事態を表に曝け出すことはしない。だが、テレ朝の報じたリークで、何が起きているかは誰でも察知できるし、麻生太郎の真意の表明がよく納得できる。 一週間続いた河野太郎との暗闘が、いよいよ沸点に達して爆発の瞬間を迎えたということであり、二人が遂に喧嘩別れしたという権力闘争の破裂のフェーズの到来だ。河野太郎は3日、6日、7日、9日と、一週間で4度も財務省を訪れ、麻生太郎と直に会談している。「河野がまた来るから待ち構えて撮っとけ」と、マスコミに予定情報を流していたのは麻生太郎だろう。自らの権力と威勢を誇示するためであり、オレの指図に従わなきゃ河野太郎はレースに出れないんだと強調するためである。… … …(記事全文3,632文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)