菅義偉辞任から5日。テレビはずっと自民党総裁選の話題で埋めている。一年前と同じように、総裁選レースのイベントを実況中継し、国民の関心を盛り上げている。9月末に選出される新総裁を賑々しく祝賀して、新政権の支持率をジャンプアップさせ、その勢いで衆院選を自民党に勝たせようとしている。安倍・菅と9年続いてきた右翼ネオリベのレジームを安泰させ、無傷のまま存続させようとしている。中継に張り付いて解説するのは田﨑史郎で、レジームの広報官であり、レジームの継続を是とするよう世論を誘導することが目的だ。 安倍・麻生のヘゲモニーで自民党内が固まり、それを世論が支持する流れを作ることが田﨑史郎とマスコミの使命だ。今のテレビ局や新聞社の幹部は、どれも安倍・菅政権の9年間に官邸権力の人事介入で出世株として引き立てられ、レジームに奉仕し、レジームの支柱となり、栄誉栄華に浸ってきたアドミニストレーターたちである。安倍晋三と麻生太郎を没落から守り、弾劾と収監から守ることが任務であり、それを首尾することで自身の地位と立場を保全することができる。 だが、果たして彼らの思惑どおり進行するだろうか。この政局を差配する頂点にいるのは安倍晋三で、安倍・麻生の意思が貫徹するよう刻一刻の動きを作っているのだが、そのシナリオどおりに9月末に結果が出ているだろうか。全体を見ながら、安倍・麻生の権力の衰えの様子が如実に窺え、レジームの動揺と不安が伝わってくる感を否めない。この総裁選を通じて、自民党は融解し陥没するのではないか。やや楽観的バイアスに依拠した、願望に促された主観的見方だと思いつつ、その予感を打ち消せない。永遠不滅の権力などないのだ。明らかに、安倍・麻生のレジームに破綻の兆しが現れている。 総裁選の今の焦点は、河野太郎と麻生太郎の鍔迫り合いである。二人の熾烈な権力闘争だ。麻生太郎は、2日続けて河野太郎を呼びつけ、その絵をマスコミに撮らせ、自身の権力の健在を国民と党支持者の前に誇示した。おそらく河野太郎に対して、「オレを副総理・財務相にしろ。甘利明を幹事長にしろ。石破茂と手を切れ。確約しろ。そしたら派閥を纏めてやる。細田派も纏めてやる。できないなら降りろ」と迫っている。… … …(記事全文3,237文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)