□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年3月9日第207号 ■ ============================================================== 砂川再審請求訴訟の判決が示したもの ============================================================== 東京地裁はきのう3月8日、砂川再審請求訴訟に対し棄却の判決で応じた。 その記者会見に立ちあった私の印象を書いてみる。 形の上では再審請求を求めた原告側の完全敗訴だ。 「司法の扉は重かった」などというお決まりの表現で報じられたりする。 しかし、少しでも現実の政治を知っている者であれば、再審請求を認める判決を東京地裁が下せるはずがないことは自明だった。 なぜならば、この砂川判決こそ安倍政権が強行した安保法の根拠にされたものであり、それを無効にすることは安保法そのものを否定する事になるからだ。 だから判決が棄却であるのは当然であるが、実は却下(門前払い)ではなく棄却(訴訟そのものを審理して結論を下した)であったところに、この判決の望外の意義があった。 すなわち、この判決は、大きなパンドラの箱をあけてしまったと私は思っている。 私がそう考える最大の理由は、この判決が、米国の一連の機密公電の存在を認め、裁判の根拠としたことだ。 そして、そこに書かれている田中耕太郎最高裁長官(砂川判決を下した最高裁大法廷裁判長)の数々の言動を認めたことだ。 しかも判決文の中で、田中耕太郎裁判官が米国大使らと接触した事について、「・・・確かに、一般的に、係属中の事件当事者と当該事件を担当する裁判官が一定の限度を超えて過度の密接な関係を築くことは、裁判所の公平らしさに懸念を抱かせかねず、そのような事態は回避されなければならないことに疑いの余地はない・・・」(判決文13ページ)と明記した。 それでいながら、田中耕太郎の言動は、再審するに至らないものであるとして再審請求を棄却したのが今度の判決である。 それがいかに不当で、「初めに結論ありき」の政治的予断であることは、即時抗告される今後の裁判の中で、いやというほど明らかにされるだろう。 実際のところ、複数の米国の機密公電に明らかにされている田中耕太郎の言動は、それが当時わかったなら、そのまま田中耕太郎裁判官の弾劾罷免につながる言動であると、司法関係者は口を揃えて言っているほどだ。 政権が代われば逆転判決は十分に有り得る。 いや、この国の司法を健全に戻すためにも、そうならなければいけない。 その思いをあらためて強くさせてくれた今回の判決だった。 ちなみに判決後の関係者の集まりの中で、1959年の砂川事件当時に被告側の弁護団のひとりであったという弁護士が次のような秘話を語っていたことが印象的だった。 すなわち田中耕太郎は本当に悪い奴だった。なにしろレッドパージ(赤狩り)は公職にある者だけでなく、民間人にも適用すべしとわざわざGHQに直訴したが、さすがのGHQも、それは日本政府の判断することだと一蹴されたことがあった、と。 なるほど、このエピソードがすべてを物語っている。 このこと一つをもってしても、砂川判決に見せた田中耕太郎の言動は、当然過ぎると思わせる証拠である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)