□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年1月13日第33号 ■ ========================================================= 中東情勢の不正義のすべてを教えてくれたシャロン首相 =========================================================== イスラエルのアリエル・シャロン元首相が1月11日、入院先のテルアビブ近郊の病院で死去した。 2006年1月に脳出血で倒れ、以来約8年間意識不明の状態が続いた末の死去だった。 シャロン首相があって今日の私がある。 外交官人生の最後となった駐レバノン大使のポストに私が赴任したのは2001年2月であった。 その直前にレバノンのハリリ首相が訪日し、森首相(当時)と首脳会談を行ったことがあった。 その時ハリリ首相から出た言葉は、「米国はイラクを攻撃すると思うか」、という事と「イスラエルの次期首相にシャロンが選出されたことをどう思うか」、という質問だった。 何も答えられない森首相を見たハリリ首相は、自らに語るように暗い表情で次のように語った。 「米国がイラクを攻撃すれば中東は混乱する」 「シャロン首相の登場によってパレスチナ問題の解決はさらに遠のく」と。 それから数日後にレバノンに赴任した私は、以来2年半のレバノンの在勤中は、まさしくこのハリリ首相の懸念が現実のものとなる事を目撃し続けた。 その主役がシャロン首相であった。 彼の名前を聞かない日はなかった。 私が中東情勢を報告する時、彼の名前に言及しない報告はなかった。 極端に言えばそれほど私は彼の言動に衝撃を受け続けた。 その衝撃とは、一言でいえばイスラエルの不条理であり、中東情勢の不条理であり、その不条理を放置するしかない国政政治の無力さである。 私にとって中東情勢の不条理はイスラエルによるパレスチナ弾圧という絶対的な不条理である。 そして2001年から2003年の間、私がレバノンで接したイスラエルはシャロン首相のイスラエルであった。 パレスチナ問題の不条理は中東の不条理のすべての根源である。 米国のイラク攻撃さえもその原因はパレスチナ問題にあった。 そしてその不条理はいまや「テロとの戦い」となって世界を覆う。 パレスチナ抵抗運動の象徴であったアラファトPLO議長は2004年11月、シャロン首相に監禁された末、謎の死をとげた。 翌年の2005年2月、ハリリ首相は暗殺された。 一見何の関係もないようなこの二人の死もまたパレスチナ問題に起因する。 アラファトの死から1年2か月後、絶頂にあったシャロン首相は脳梗塞に見舞われた。 私は直感的にアラファトの怨念を思い浮かべた。 シャロン首相亡き後もイスラエルの不条理は微動だにせず、アラファト亡き後のパレスチナは困窮の極みだ。ハリリ亡き後のレバノンは再び中東の不条理の草刈り場と化した。 中東の不条理は、いまやエジプト、シリアにまで及ぶようになった。 私がレバノンにいた時はもっとも盤石だと思えたエジプトやシリアである。 中東情勢の、気が遠くなるほどの不条理。 その根源がイスラエルによるパレスチナ弾圧であることを私に教えてくれた反面教師。 それは私の場合はシャロン首相であった。 合掌 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)