□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年8月9日発行 第49号 ■ =============================================================== 菅民主党政権を追い詰める米国の軍事負担増額圧力 ================================================================ 8月7日の東京新聞は、「攻防 国防費改革」という特集記事の中で、米中間 選挙を前にして、米連邦議員が国防予算の削減に血眼になっている事を指摘して いた。 それも当然だ。米国の財政赤字は日本以上に深刻なはずだ。国民生活は日本 以上に格差が進み、弱者切り捨ては悲惨そのものだ。 しかし戦争大国米国のことだ。一方的な軍事費削減に突き進むはずはない。 他国にそのしわ寄せを押し付け、米国の戦争力を弱体化するような事はしない。 負担押し付けの最大の標的は、当然ながら日本である。 「日米安全保障体制で、日本は国内総生産(GNP)のわずか1%の防衛費で 安全を確保している」 この言葉は今年3月ゲーツ国防長官が、訪米した岡田克也外相と意見交換した 時に冷ややかに発した言葉であるという。 GNP比で4.7%を支出している米国と「対等ではない」といわんばかりだ。 これはまさしく日本の対米従属官僚や御用学者がメディアで決まり文句のよう に垂れ流している言葉だ。 米国の軍事予算増額圧力は、具体的には普天間基地のグアム移転経費の増額要求 や、思いやり予算の削減阻止となって、菅民主党政権に襲い掛かってくる。 日米の特別協定に基づく思いやり予算は来年3月に期限切れを向かえる。それ までに新たな合意が必要になる。 民主党政権は当初「米軍施設の光熱費まで負担するのは国民の理解を得られ ない」として抜本的見直しを求める予定だったが、いつの間にか当初の意気込み は消えた。 グレグソン国防次官補は7月27日、米下院軍事委員会に書面を提出し、 「日本が予算を減らせば、日本が自国防衛に熱心でないというイメージを友好国 だけでなく、潜在的な敵国にも伝える事になる」として思いやり予算の削減 どころか増額を求め始めたという。 日本抜きの米国議会で米国の政治家たちが勝手に日本の事を論じているのだ。 しかもそれを隠さずに堂々と公開する。日本が文句を言えるはずが無いと いわんばかりだ。 その一方で米上院歳出委員会は7月15日、国防総省が要求した来年度のグアム 移転費要求の7割をばっさり削減した。その肩代わりはグアム移転を願う日本が行 なって当然だ、というわけだ。 米国はグアム移転費の6割を日本に押し付け、それを日本は受け入れ毎年度忠実 に予算化してきた。その上に、さらに負担増を求めてきたのだ。 東京新聞の記事は次のような言葉で締めくくっている。 「米国の国防費改革は、同じく財政赤字にもがく日本経済を追い詰めている」 そう思っていたら今日(8月9)発売の週刊ポスト8月20・27日号の覆面 官僚座談会の中で次のような匿名官僚のやり取りが掲載されていた。 「米軍基地移転には表ざたにできない話がある・・・移転協定では日本の負担は 基地建設と米軍住宅建設の資金だけを負担する事になっているが・・・インフラ 整備の追加要求を米国は求めてきた・・・米軍統合グアム計画事務所はグアム政府 に対して行なった説明で日本が650億円(追加して)出す事になっていると 一方的に説明している・・・菅内閣は払う気だろう・・・」 所詮週刊誌の覆面官僚座談会などというものはあてにならない作り話だ、と 一蹴するのはたやすい。 しかし、あらゆる情報を総合すればこれはありうる話だ。 そうだとすれば新たな沖縄密約が行なわれようとしているということだ。 情報公開を謳う民主党政権もまた国民に隠して対米従属外交を始めたという ことだ。 日米軍事同盟を続ける限り密約は避けられない。 なぜならどのように説明しても説明できない事を米国は日本に要求し、日本は それを断りきれないからだ。 この悪循環を断ち切る政権が現れない限り、日本は米国に苦しめ続けられること になる。 そのしわ寄せは基地住民や増税を迫られる日本国民に押し付けられることになる。 日本政府の対米従属はいつも弱者である国民に押し付けられて終わるのである。 革命政権の民主党でもこの壁は1センチたりとも打ち破れないという事だ。 それでも世論調査では8割の国民が日米同盟を支持しているという。 この矛盾をどう考えればいいのだろうか。 了 おしらせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演は約240名の参加者を得て盛況に無事終了 しました。 参加者、関係者の協力に改めて謝意を申し上げます。 森田実氏には「さらば日米同盟」に過分の書評を戴きましたことをお伝えします。 なお赤坂区民センターの都合で、書籍販売や録画が出来ず、したがって参加でき なかった読者の方々には講演・対談の模様が報告できなくなった事をお詫びします。
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)