□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月11日発行 第14号 ■ ───────────────────────────── 挫折した民主党政権の公務員改革 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 参院選挙の結果が出ないうちに菅直人民主党政権の三番目の限界、 つまり増税、対米従属に次いで失望させられた公務員改革の挫折に ついて、急いで書いておく。 菅直人民主党政権が参院選挙を優先して6月16日に強引に国会を 閉会した事によって、多くの改革法案が廃案もしくは継続審議となった。 その中の一つに国家公務員改革法案があった。言うまでもなく公務員 改革の中心は天下り廃止である。 ところが6月22日に「国家公務員の退職管理に関する基本方針」が 閣議決定された。 この方針の内容をいち早くスクープしたのは読売新聞だった。6月 22日の一面トップで、これでは天下りを容認した事と同じだと批判した。 この方針によって役所からの「出向」人事の奨励・拡大がまったからだ。 しかも「出向」先は、独立行政法人や公益法人だけではなく、民間企業 まで含まれる。そして従来は、「退官後2年間は、所管企業への天下り 禁止」といったルールがあったのに、今度の方針ではこれまでも解除された。 そんな中で、7月6日に前原国土交通省は突如として国土交通省傘下の 最大の天下り法人「建設弘済会」などの解散・縮小を発表した。 これは天下り禁止の姿勢を示す選挙目当ての発表だと報じられたが、 真相は別のところにある。 つまり6月22日の閣議決定で天下り禁止が事実上全面解除されたから、 もはやこれまでの天下り法人は用済みになった。それを少しぐらい減らして も影響はない。それどころか天下り廃止という印象を国民に与えられる、 というわけだ。 こういう複雑な目くらましはもちろん民主党の思いつきではない。官僚の 入れ知恵を民主党がそのまま受け入れたということだ。 菅民主党政権の堕落ぶりはまだある。 こうした民主党政権の公務員制度改革逆行に正面から反対していた 現役官僚が選挙中にこっそり勧奨退職に追い込まれていたというのだ。 鳩山内閣発足当初は、能力と改革姿勢を買われた前・国家公務員制度 改革推進本部事務局審議官の古賀茂明氏(昭和55年旧通産省入省)は、 いったんは、仙谷由人行政刷新担当大臣(当時)の補佐官への抜擢が 内定していたほどの改革派だったという。 ところが、霞が関からの強い反発があって、仙谷氏は断念。2009年末に なると、抜擢どころか、国家公務員制度改革推進本部事務局を追われ、 出身の経済産業省に戻されて「大臣官房付」という閑職に置かれ続けてきた。 そんな中で古賀氏は週刊エコノミスト6月29日号に発表した内容は、 「高齢職員の出向拡大や窓際ポストの新設などは若手の意欲を削ぐ。 このような幹部クラスの既得権維持ではなく、意欲ある若手官僚の声を 聞いて公務員制度改革を進めよ」と主張して話題を呼んだ。 これはまっとうな意見だ。これに呼応するかのように、6月23日の 東京新聞「論説室から」では、長谷川幸洋論説委員が、霞ヶ関の各省庁で 幹部クラスと若手官僚の世代間対立が進行している、と次のように 書いていた。 「・・・改革が進まず、国家公務員の人件費は二割削減どころか二割増加 の見通し。新規採用削方針はその場しのぎの苦肉の策として出てきた。 結果的に公務員のやる気を引き出すどころか将来を嘱される若手たちが 怨嗟の声を上げている。民主党政権は何をしているのか、と・・・」 ところが正論を吐く古賀氏はついに閑職にとどめて置くだけでは済まず、 選挙期間中に民主党政権から退職に追い込まれたという。民主党は迷った 末に官僚組織と手を組んで安定政権を選んだわけだ。 この事は大手新聞などでは一切報じられていない。だから一般国民は何も 知らない。しかしネット上では関係者の間で内部情報が飛び交っている。 もはや菅直人民主党政権には本物の公務員改革はできない。 外務官僚と一体となって対米従属外交を進める菅民主党は、事業仕分けた 予算編成ですっかり財務官僚に取り込まれ、増税と公務員改革の骨抜きに走る。 その一方で官僚と対決姿勢を鮮明にする「みんなの党」の支持が再び 上向きはじめた。 果たして国民は今日の選挙でどういう審判を下すのであろうか。 そして参院選後はどのような政党の合従連衡による「改革」が始まるの だろうか。 もうすぐそれがわかる。政局の第二幕が始まる。 了 ≪メルマガに関する問い合わせは、info@foomii.com までお願いします。≫ 出版記念会のお知らせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの ご参加を得て以下の通り行ないます。 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6) なお講演会の概要については次のURLを参考にして下さい。 http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20100702
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天木直人(元外交官・作家)