□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月9日発行 第10号 ■ ───────────────────────────── 菅首相の財政再建策は日米関係を危うくする ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 昨日のメルマガに関連する記事を見つけたので続けて経済問題に ついて書くことにする。 これは経済政策の問題であるが同時に日米関係の問題でもある。 ニューズウィーク誌日本語版7月14日号に、ピーター・タスカ という投資顧問会社アナリストによる「本当は危ない菅エコノミクス」 という論説があった。 その趣旨はこうだ。 ・・・普天間基地でヘマをした鳩山首相と違って、菅首相の実用 主義で日米関係は持ち直したかに見える。 しかし日米関係を脅かすのは基地問題ではなく菅民主党政権の財政 再建政策である。 日本(やドイツ)のように貯蓄超過の国が消費を締め付け、自国 通貨を切り下げようとするなら、アメリカのような消費超過の国は 借金を続けなければならない。雇用がますます失われることになる。 このままでは長続きしない。すでにアメリカではポピュリズムと経済 ナショナリズムが勢いを増している。 今は普通の時ではない。あの米英の間でさえ「特別の関係」が問わ れるような余裕のない時だ。 この動乱の中で日米関係が今のままで生き残るとすれば驚きだ。 日本が「カインジアン」に転向すれば、いつ日米関係にひびが入っても おかしくない・・・ ピーター・タスカ氏が米国政府の意向を受けて菅政権にシグナルを 送っているのか、あるいは善意で助言をしているのか、私は知らない。 しかし、米国が財政再建より景気回復(需要拡大)を望んでいる事は 先のG-20でも明らかだ。 菅首相はそのような米国の意向を知った上で、それでも日本の将来の 為には財政再建を優先すべきだと政治決断したのだろうか。 財務官僚は、米国に逆らってまで、日本経済のために消費税増税を 行なおうとしているのか。 それは日本経済の将来のため、日本国民のためを思っての事か。 あるいは財務官僚は財務省の野望を優先し、菅直人首相が米国の 不評を買って倒れても構わないから消費税増税を菅直人首相にさせようと しているのか。 それとも単純に米国政権の考えが読めなかったのか。 私は、財務官僚も、あるいは側近経済学者に吹き込まれて財政再建と 経済成長の両立は可能だと言い出した菅首相も、米国の事を何もわかって いないだけだと単純に考えてしまう。 いよいよ菅直人首相は消費税増税と景気回復の双方を同時に実現せざる を得なくなった。 財政再建の公約を変更すれば今度こそ菅首相に対する世論の評価は 急降下する。 だからといって財政再建のあまり日本経済を更に不況に追いやれば、 米国は日本を見捨てる事になる。 どっちに転んでも菅首相は大きな課題を背負った事になる。 官僚はそんな菅首相を助けてはくれない。助ける能力もない。 あの中川財務大臣の時もそうだ。身を張って中川大臣をいさめる事は しなかった。 大臣が恥をかこうが、日本の信用が失墜しようが、官僚たちはお構い 無しだった。彼らにあるのは保身と組織防衛だけである。 菅政権の本当の敵は米国でも小沢一郎でも野党でもない。 官僚を味方につけて長期政権をももくろもうとする菅直人首相は、その 官僚に潰されてしまうおそれがある。 最大の敵は官僚である。そういい続けてきた菅直人首相は今こそ 自らの原点に立ち返るべきである。 了 ◎メルマガに関する問い合わせは、info@foomii.com までお願いします◎ 出版記念会のお知らせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの ご参加を得て以下の通り行ないます。 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6) なお講演会の概要については次のURLを参考にして下さい。 http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20100702
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)