━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 No.016 2012/12/25 日本は世界最悪の「女性差別国家」。なぜ誰も問題化しないのか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ じつは、日本は国際的には「女性差別国家」と見られています。それも、国別順位で100位以下という最悪の「女性差別」が行われている国と見られているのです。それなのに、メディアは問題にせず、国民も、当の女性も、この件にあまり関心がありません。 女性をもっと大事に、そして活用しなければ、日本の再生はありえません。 [目次] ──────────────────────────────────― ■労働の男女格差、日本は世界最低レベル ■出産で一度退社してしまうと職場復帰が難しい ■ダボス会議も日本の女性の地位の低さを指摘 ■女性の議員、大臣が少なく、女性が首相になったことがない国 ■「男女雇用均等法」は当初、努力義務にすぎなかった ■改正は続いているが、差別もまた続いている ■女性の非正社員化に拍車がかかっただけ ■マスメディアの無関心と保守陣営の猛反発 ■日本は世界でも唯一の「企業社会主義国家」 ■リスクが大嫌いだから終身雇用にすがる ■日本の年輩社員の生産性は新興国の労働者以下 ■日本の労働生産性がアメリカ、OECD諸国より低いわけ ■終身雇用制度の下では女性正社員はコスト高に ■世界的に見て日本女性だけが異常な労働環境にある ■「アラサー」「アラフォー」という言葉のバカバカしさ ───────────────────────────────────――― ■労働の男女格差、日本は世界最低レベル 2012年12月17日、先進34か国が加盟する経済協力開発機構(OECD)から、「ジェンダー・フォーラム」の報告書が発表された。 それによると、日本の男女間の給与格差は40歳以上では40%にも上り、OECD加盟国中、韓国に次いでワースト2位だった。上場企業の役員の女性の割合はわずか5%で、これも加盟国中では最低レベル。 つまり、日本では「男女平等」は実現しておらず、実際の日本は「女性差別国家」なのである。しかも、そのレベルは世界最悪の部類に属す。 OECD報告書によると、日本では25歳から34歳の女性が大学を卒業している割合は59%で、男性の52%を上回っている。つまり、女性のほうが高学歴である。さらに、45歳から54歳でも、男性の学士保持者が32%、女性は23%となっているので、日本の女性は優秀である。 しかし、男女間の給与格差は、なんと29%。これはOECD諸国の平均の16%より、はるかに大きいのである。そして、前記したように40歳以上になると40%も開きがある。これは、同じ能力で同じ仕事をしても、男性の6割しか給料をもらえないということを表わしている。 また、同じく前記したように、日本の上場企業の役員における女性の割合はわずか5%にすぎない。学歴では男性と変わらなくなったのに、給料でも出世でも差別されている。それが、日本のリアルな姿なのである。 ■出産で一度退社してしまうと職場復帰が難しい なぜ、日本では、女性に男性並みの給料を払わないのだろうか? OECDの報告書では、日本女性が労働市場で困難に直面する要因として、ワークライフバランスの難しさを挙げている。日本女性の多くは出産後に退職することが多い。そして、その後、職場復帰を希望しても実現は非常に厳しいというのだ。 また、被扶養者となると、所得税免除の範囲内に収入をとどめたほうがトクな場合がある。いわゆる「年収103万円以下」であれば「配偶者控除が受けられる」という制度だ。つまり、このような職場の環境、税制などが、既婚女性の仕事へのモチベーションを削がせていると、OECDは指摘する。 さらに、OECDの報告書では、2011年の日本の労働市場参加率は、男性が84%、女性が63%で、この状態が続けば今後20年で日本の労働人口は10%以上減少する予測している。経済成長にとって男女平等が鍵であり、労働市場における男女格差を解消することが日本の発展につながる、と結論づけている。 *OECD報告書「Gender Publication - Closing the Gender Gap: Act Now」 http://www.oecd.org/gender/closingthegap.htm *「Lack of support for motherhood hurting women’s career prospects, despite gains in education and employment, says OECD」… … …(記事全文9,545文字)