━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「植草一秀の『知られざる真実』」 2012/02/25 東電実質国有化の狙いは日本政投銀救済にあり 第148号 ──────────────────────────────────── これまで予想してきたとおり、政府は東京電力を「りそな方式」で救済する 方針を示している。 りそなの場合、政府が利用したのは預金保険法第102条第1項第1号措置 という、言わば法の抜け穴であった。 銀行が自己資本不足に陥ることを経営危機と呼ぶ。債務超過になれば実質破 綻である。破綻した銀行は法律の定めに従って法的整理されることになる。 りそな銀行は狙われて自己資本不足に追い込まれた。 同様の財務状況にあった銀行はいくつもある。いずれの銀行も将来利益計上 の見通しが立たないため、繰延税金資産を自己資本に計上することは適切でな いとの見解が成り立つ銀行であった。 2003年の事例の場合、これらの銀行のなかで、繰延税金資産の自己資本 への計上が5年分認められなかったのはりそな銀行だけだった。しかも、この 話が浮上したのは決算期末を過ぎた2003年4月に入ってからだ。 りそな銀行は狙われて自己資本不足銀行に陥れられたのである。自己資本不 足に陥った場合、適用される措置が大きく分けて二つある。自己資本がマイナ ス、つまり、銀行が債務超過に陥った場合には、破たん処理される。他方、自 己資本が基準を満たさないがマイナスに転じていない場合は、第1号措置が適 用され、銀行は公的資金で救済される。 預金保険法102条第1項には、天国と地獄の区分基準が盛り込まれていた のである。 りそな銀行の自己資本不足状況を生み出すことに積極的に関与したと見られ る木村剛氏は、りそな銀行の繰延税金資産計上はゼロないし1年以外にはあり えないことを主張し続けた。 2003年5月14日に木村剛氏が日経関係のサイト上に発表したコラム記 事でも、「破たんする監査法人はどこか」とのタイトルで、明らかにりそな銀 行だと分かる表現で、繰延税金資産計上はゼロないし1年しかあり得ないこと を力説した。 将来利益計上の見通しが立たないことがその理由である。会計士協会規則に 則った見解であった。このルールを守らないのであれば、監査法人を破綻させ るべきだとまで主張した。… … …(記事全文5,868文字)
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植草一秀(政治経済学者)