□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月27日第833号 ■ ============================================================= 「TPP参加は日米同盟と表裏一体」と説く葛西敬之JR東海会長 ============================================================ もはやTPP騒動は終わったと私は思っている。 それはこの問題が息の長い日米経済交渉の場に移ってしまった と思うからだ。 それを教えてくれるのが省庁横断チーム設置の動きである。 すなわち野田政権はこれから始まる21分野における対米事前協議 に臨むに際して、国益を守るためにはオールジャパンのチームをつく らなければならないと言い出した(11月19日日経)。 これは要するに官僚たちに任せるということだ。 そしてそのことは取りもなおさずこれまでの対米包括協議への先祖 帰りである。 どの省庁の官僚をトップにするかの熾烈な権限争いから始まって、 その交渉自体も関係各省庁が縄張り争いを繰り返す。 物事は何も進まず、国民の目からは何をやっているのか分からなく なり、メディアも何を書いていいかわからなくなる。 かくしてTPPは報道から取り上げられなくなる。 しかしそのような現実とは別に、これからもTPP是か非かの議論 は続けられるであろう。 なぜならばTPPは消費税増税とならんでこの国の政界再編の一大 イシューとなるからだ。 その議論にそなえてこのメルマガを書くことにした。 メディアに登場するいわゆる「民間有識者」と呼ばれる人物の中で、 この人ほど米国重視、中国敵視の人物はいないだろうと思われる一人 にJR東海会長の葛西敬之氏がいる。 その葛西敬之氏が11月27日の読売新聞「地球を読む」で見事に 言い切った。 TPP参加と日米同盟は表裏一体だ、と。 彼は言う。 冷戦終焉後20年余を経て今、21世紀の世界の骨格が見え始めた。 それは太平洋からインド洋に至る海洋をめぐる米中の対峙と勢力均衡 である、と。 太平洋への勢力拡大を窺う中国の意図は隠すべくもない。それを 牽制する米国はいまや一国では勢力均衡を作り出すことはできない。 だからもっとも現実的な対応は、地政学的な立地、政治的な価値観、 そして市場経済原理を共有する国々が同盟を結び、その経済的基盤と してブロック域内での交易を自由化することである、と。 そう述べた上で葛西氏は次のように言う。 安全保障は日米同盟、経済の繁栄は東アジア共同体などという 不整合は成立しない。TPPに裏打ちされた日米同盟しか選択肢はない。 政府は次期戦闘機の選定をはじめとする日米同盟強化策を進めるととも にTPPがその経済的裏づけとなった時はじめて地域の平和と安定が 築かれる。中国が紳士的な隣人となる、と。 ここには21分野にわたる経済的利害得失は何も語られない。安全 保障の観点から見たTPPの是非論だ。 これまで誰もが正面から語ろうとしなかったTPP議論の重要な 一側面を見事に浮き彫りにしてくれている。 すなわちTPP議論は経済問題にとどまらないこの国の基本姿勢を問 う問題であるということだ。 私は葛西氏の考えには賛成しないが、TPP参加は日米同盟と一体だ と言い切った事を歓迎する。 今後のTPP論議はこの葛西氏の論説の是非を巡って行なわれるべき である。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)