□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年3月28日発行 第90号 ■ ───────────────────────────── 日米同盟に耐えられない国であると米国軍人に喝破された日本 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ これから書くことは、日本中探してもいまだ誰も指摘していない事である。 3月28日の日経新聞「日米安保50年、同盟の寿命 下」の記事の中で、次のような 言及があった。 「・・・昨秋、米シンクタンクがまとめた『期待はずれの日米同盟の管理』と題する 報告書がオバマ米政権内で注目されている・・・」 この報告書がオバマ政権内で注目されているかは、私は疑わしいと思っている。なぜなら これは日本向けに発せられた米国軍人の報告書であり、米国政権にとって重要な報告書とは 思えないからだ。 しかしこの報告書が日本の日米同盟重視派に与える衝撃が大きい事は確かだろう。 見ているがいい。これから徐々にこの報告書がまちがった形で日米同盟を議論する際に 使われる事になる。 たとえば桜井よしこ氏は週刊ダイヤモンド3月20日号における自らのコラム「縦横無尽」 においていちはやくこの報告書の事を書いている。 鳩山政権のように米国の信頼を失わせるような言動をしていると、米国のほうから日米同盟 を破棄してくるぞ、とこの報告書を引き合いに出して攻撃材料に使っている。 この報告書とは、2009年11月に米国のシンクタンクNBR(National Bureau of Asian Research)から提出された「Managing Unmet Expectation」と題する小冊子の事である。 著者は退役陸軍将校(中佐)のマイケル・フィネガン氏、その前書きをリチャード・ローレス 元国防副次官、ジム・トーマス元国防総省次官補代理が書いている。 その邦訳が、日経コラムニストや外務省副報道官などをつとめた事のある谷口智彦慶応大学 大学院教授の編集、翻訳によってウエッジ社から「同盟が消える日 米国発衝撃報告」という タイトルで2月25日に発行されている。 さて前置きが長くなったが、私が日本で誰も指摘していない事を書くという意味はこういうことだ。 この報告書は、日米同盟廃棄をとうとう米国側から言い出す、その可能性を米国関係者が はじめて口にだしたものとして衝撃的だと喧伝される。 それは一面の真実をついている。 しかしこの報告書の最も注目すべき箇所はつぎの箇所なのである。 つまり米国軍人たちが日米同盟の下で戦争準備を進めようと日本に持ちかけた時に、日本側が まったくそれに応じようとしてこなかった、おそらくこれからもそうであろう、という事実である。 米国軍人にとっては、これでは日米同盟は形だけのものだ、実体がない、我々はこれを同盟関係 とは言わない、と映る。 つまり日本の自民党政権も官僚も自衛隊も、口先では日米同盟重視と言いながら、いざ有事になった 時に米軍と一体となって戦争をする気は全くない、だから欧州や韓国などの同盟国との間で出来ている 戦争遂行準備が日本との間ではまったくできていない、と米国軍人たちが告白したのだ。 この指摘は極めて重要である。 これまで米国との戦争準備を進める事に猛反対してきたのは護憲、左翼勢力であり、平和を願う国民 であると相場が決まっていた。 ところが米国軍人にしてみれば、歴代自民党政権も官僚も防衛省も、米国と一緒になって戦争を行う 覚悟はまったくなかったと言っているのだ。 この告白は極めて重大である。 政治的な理由で歴代政府が護憲、左翼政党の反発をさけようとする事はわかる。支持率低下を恐れて 平和を主張する世論に気を使うことはわかる。 しかし、歴代政権が米国との戦争準備を進めようとしなかったのはそれだけではないはずだ。 これまでの日本の政権政党は、その気になればいくらでも、野党の反対を押し切って、あるいは 国民の声を無視して、その政策を強行してきた。 米国と一緒になって戦争を行おうとすればできたはずだ。 その気がなかったのだ。その覚悟がなかったのだ。 米国軍人にとっては国家のために米兵の犠牲はやむを得ないと考えるのは当然である。欧州は もとより韓国さえも、米国の同盟国はすべてそれが当然となっている。 ところが日本は違った。 すなわち日本と言う国は、どのような政権が出来ようとも、日米同盟重視の念仏は他のどの国より も唱えるが、米国と一緒に戦う準備を本気で考えようとしなかった。これで同盟国といえるのか、そう 米国軍人は考えているのだ。 これは決して米国軍人が日本を脅かしているのではない。軍人としての自然な疑問であり欲求不満 なのである。 見落としてならないのはこれが米国軍人の考えであっていまだ米国政権の考えとなっていないという 所である。 この考えが国防総省全体の考え方となり、国防総省の意見がクリントン国務長官やオバマ政権 の考えになっていくであろうか。 そうなれば日米同盟は米国のほうから廃棄される事になる。 しかし私は決してそうならないと思う。米国軍人がいかに不満を抱こうとも、オバマ政権が、いや その後に続く米国政権が、日米同盟を廃棄すると言ってくるとは思えない。 日本はまだ失うには大き過ぎる国であるからだ。 ひるがえって日本の自衛隊が米国と一緒に戦場に行かせろと言いだすだろうか。 テロと戦うために、他の同盟国と同じように戦争準備を進めてくれと政府に要求するだろうか。 そんな愚かな事を言い出すはずはない。 そんな要求を認めるような政権や官僚が出てくるとは思えない。 日本は米国の戦争と一蓮托生になるほどおろかな国ではない。 これを要するに日本は日米関係の重要性は唱えても、米国の戦争と命運をともにする日米同盟には 耐えられない平和な国なのである。 いくら米国軍人らが不満でもその日本と付き合わざるを得ないのだ。 ここにこれからの日米関係のヒントがある。 如何なる政権が日本に出来ようとも、これからの政権は米国の戦争から離れた関係を目指すしかない。 米国の戦争から離れてなおかつ良好な日米関係を目指すしかない。 そして米国はそのような日本を認めざるを得ない。日本が魅力あるかぎり。 問題はそのような軍事協力なき良好な日米関係を唱える政権があらわれて来ない事だ。 日米同盟のジレンマはこよなく日本側の問題なのである。 _________ 天木直人のメールマガジン 2010年3月28日発行 第90号

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