ネットを見ていると、ロシアがNATOに入ればいいのにという意見を目にする。あまりに無知すぎて話にならない。こうした無知蒙昧が西側のプロパガンダを頭から信じて疑わない態度となり、ロシアに対する一方的な偏見と全否定に繋がっている。現在のNATOは何のためにあるのか。その存在意義は何で、その集団安保体制の敵は誰なのか。誰から誰を防衛する軍事同盟なのか。こんな基本的なことも理解してない者が多くいる。ロシアがNATOに加盟することはあり得ない。それはNATOの存在意義の否定であり、論理矛盾である。 可能性として、現在のプーチン体制が倒れ、ロシアが親米化し、欧米と仲のいい反中反共国家に転換して、ユーラシアワイドにNATOに拡大する場合が考えられるが、仮にそうなるときは、逆に東欧の小国群が反発し、ロシアのNATO入りはやめてくれと言うだろう。東欧小国群にとって、ロシアと敵対する軍事境界線が引かれて、アメリカの防衛ラインの中に入ってないと不安なのであり、ロシアと同じ軍事同盟の中で共存するなど考えられないからだ。彼らにとって、NATOが反ロ軍事同盟でなくなる未来はあり得ない。 NATOはそもそもソ連共産主義を敵とし、ソ連を封じ込めするために構成された集団安保の軍事同盟である。冷戦の産物である。そのため、本来、ソ連が崩壊してワルシャワ条約機構が清算された時点で、その存在意義を失って地上から消えてよいはずのものだった。敵がいなくなったのだから、軍事同盟は解散していいはずだ。だが、そこからNATOは新たな敵を設定し、新たな目的を持って存続することになる。新たな敵とはロシア連邦である。現在のNATOは、ロシア連邦を封じ込めし、ロシア連邦をソ連と同じ運命に追い込むことを目的とした軍事同盟だ。 ソ連崩壊後、ロシアが混乱期にあった90年代は、NATOのその新たな性格や意義づけは輪郭がくっきりではなかった。が、ゴルバチョフとの口約束を裏切って東欧諸国を次々と加盟させる中で、新しい目的と方針を露骨化するようになる。その進行はまた、世界のエネルギー需要が増大して資源国のロシアが潤い、プーチンのロシアが大国として復活する過程とパラレルだった。そしてさらに、そこからの過程は、旧ソ連および旧共産圏の諸国でカラー革命が続発し、プーチンのロシアを包囲し瓦解させようとするCIAの策動と謀略が顕著になる新冷戦化の始まりでもあった。… … …(記事全文3,584文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)