12月8日は太平洋戦争の開戦から80年の日になる。NHKではかなり精力的に特集企画が組まれ、総合・教育・BSと関連番組が目白押しで並び、週末の4日と5日にはNスペの放送(伊東敏恵のナレ)があった。サンデーモーニングの「風をよむ」はどんな編集と制作だろう、すぐにツイッターで感想と批評を上げてやろうと待機していたところ、意外なことに肩透かしを食わされた。「風をよむ」で特集がなかったのだ。来週12日に放送する可能性もあるけれど、テレビの普通の編成では5日予定が常識だろう。忠臣蔵の特集を12月14日の後に放送しても興ざめして意味がないのと同じで、イブを過ぎたクリスマスケーキのように価値が暴落する。 旬を過ぎた出し遅れの余剰在庫コンテンツになる。5日の「風をよむ」はワクチン格差の特集で、キレのない、興趣を覚えない、平板で退屈な時間潰しの内容だった。開戦30年・開戦20年のときは、番組は気鋭の放送で臨んだはずである。この番組らしくオーソドックスな反戦平和の論調を茶の間に送り届け、視聴者を正しく啓蒙し、右翼を逆上させていたはずだ。なぜ、サンデーモーニングは開戦80年の特集報道を避けたのだろうか。 その理由を考える上で、もう一つ、おそらく問いの解答に繋がるヒントとなると思われる事実材料がある。週刊金曜日の先週号(12/3発売)もまた、開戦80年を特集していない。メインの特集記事は筑紫哲也の回顧談で、太平洋戦争の歴史は全く触れられてない。小さな記事の一つも見当たらない。さらに、もう一つの左翼ジャーナリズムの事実も発見した。ひょっとしたら思いつつHPを確認したら、赤旗日曜版の12/5号も開戦80年は一切話題にしていない。1面は辺野古新基地を特集している。 この媒体は政党の機関誌でもあるから、日本共産党の論理と必要で時事をフォーカスするわけで、一般の興味関心とは別の問題が編集対象になるのは仕方ないことだ。だが、週刊金曜日と赤旗日曜版と、コアな左翼が定期購読する二つの週刊誌がどちらも開戦80年を無視したことは、やはり尋常ではないというか、そこに何らか意味を抉り出すべき思想的病因が介在することを窺わせる。サンデーモーニングと合わせて、開戦80年無視のこの三者揃い踏みは、明らかに不審で不可解な出来事であり、看過できないジャーナリズムの過失である。事件と言っていい。… … …(記事全文3,222文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)