自民党総裁選がマスコミ報道の主役になり、テレビの関心を埋めている。石破茂が候補で登場して、長く続いた安倍政権の路線を止揚する「グレートリセット」を標榜しているため、テレビでの論戦が活発で面白い。告示当日の昨夜(8日)は報ステとNEWSで公開討論会が行われたが、アベノミクスの成否と負の遺産(森友・加計・桜)の二つに焦点が当てられ、非常に興味深いコンテンツとなった。週末12日に記者クラブ主催の公開討論会が予定されていて、延長戦が演じられるので注目される。 討論の次第によっては、14日に開票される地方党員票に影響が出るだろう。討論会で明らかになったのは、菅義偉にはディベートの才能がないという決定的な事実だ。語る言葉が貧相で、反論が巧みにできず、印象に劣り、説得力のポイントを稼ぐことができない。厳しい質問に対して逃げてばかりいる。勉強家で政策通で、語りたい中身と論点が山ほどあり、テレビ出演を重ねて場慣れしている石破茂とはコントラストが著しい。リーダーとしての器量に欠ける。 普通の感覚で判断して、リーダーに相応しいのは石破茂の方だろう。石破茂は、厳しい批判をされても逃げるということがない。菅義偉の方は、質問に答えず別の話をしてその場をかわす態度に終始していた。いつもの官房長官会見の手法と同じだ。だが、選挙の討論会ではそれは通用しないのである。官房長官会見では、司会が官邸官僚だし、その場の記者たちも身内で昵懇の安倍記者ばかりなので、菅義偉のペースで仕切って進行させることができる。 「当たらない」とか、「政府として問題とは考えない」とか、「個別の問題については回答を差し控える」とか言って切り捨て、応答をせず、「時間がないので次」と言えばそれで済んだ。論破される前に強権的に遮った。選挙の討論会では、菅義偉も一候補者であり、そのような態度と方式は通用しないのだが、菅義偉にとってマスコミとのやりとりは官房長官会見のスタイルしか覚えがなく、冷静な応酬ができず、粗雑な方法で押し通してしまうのである。討論を演出する才能がなく、弁が立たず見劣りする。… … …(記事全文3,319文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)