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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

中東の歴史が動いたエジプト大統領選挙の結果
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2012年6月25日第489号 ■   ==============================================================      中東の歴史が動いたエジプト大統領選挙の結果     ==============================================================  壮絶なせめぎあいの末、エジプトの新大統領にモルシ氏が 決まった。  これは中東史に残る大きな出来事である。  中東情勢に無知な解説者や、その重大な意義を知っていながら 語らない御用解説者やメディアによって、ほとんどの日本国民は 気づかないだろう。  しかし、エジプト新大統領としてシャフィク氏ではなくモルシ氏が 選ばれたことはものすごいことなのだ。  なぜか。  それは、いまや頓挫し、忘れかけられていた中東の春が再び蘇るから である。  しかもそれがエジプトで起きたからである。  中東の平和も戦争も、もちろんパレスチナ問題もエジプト抜きには 語れない。それほど中東ではエジプトという国が影響力を持っている のだ。  モルシ氏が選ばれた事のどこが衝撃的なのか。  それはムバラク政権のアンチテーゼであるからだ。  ムバラク政権のどこが問題だったのか。  それはムバラク氏の長年の独裁制だけにあるのではない。  永久独裁体制と引き換えにパレスチナ問題を封印したその対米従属 さの大罪こそ問題だったのだ。  中東全体を対米従属にさせた大罪である。  シャフィク氏はムバラク軍事独裁体制下で最後の首相を務めた元空軍 司令官だ。  だからもしシャフィク氏が選ばれていたらそれはエジプトの春の挫折 を意味する。  何のためのムバラク追放であったのか。そのための犠牲であったのか。  だからこそあれほどタハリール広場で反対運動が起きたのだ。  その一方でモルシ氏が選ばれたらエジプト革命は本物になる。  だからこそ旧勢力があれほど抵抗を見せたのだ。  混乱の裏には旧勢力の様々な妨害や情報操作があったに違いない。  そしてその裏に米国が関与していたことは言うまでもない。  モルシ氏はそれでも勝った。  これが驚きなのである。  もしこれがパレスチナの選挙なら、2006年に見られたように モルシ氏の選出は潰されたであろう。  選挙によって示された民意さえもがあっさり否定されるのだ。  しかし呪縛から解かれたエジプトは傀儡にするには大き過ぎる国で あったということだ。  米国の中東に及ぼす影響力が弱体化しているということだ。  私はモルシ氏が大統領として機能するにはまだ紆余曲折があると思う。  エジプトはさらなる混乱に陥る可能性があると思っている。  そしてその混乱の原因が、モルシ氏がイスラム原理主義組織ムスリム 同胞団の傘下にあると喧伝されるだろう。  イスラム教とテロを結びつけるいつもの情報操作だ。  しかし、この点についてきょう6月25日の東京新聞は「イスラム を恐れるな」という社説を掲げてこう書いている。  「エジプトの混乱は続くかもしれません。軍部は権力をなかなか放し たがりません。しかし大きな流れは変わらないでしょう。エジプトの中 でも外でもイスラムを嫌ったり怖がったりするだけでは何も進まない のです」、と。  その通りなのだ。  悪いのは宗教ではない。ましてやイスラム教ではない。  独裁と宗教が結びつくことが危険なのだ。  暴力と宗教が結びつくことが危険なのだ。  そう思わせる政治が悪いのだ。  すべては政治が正しい事を行なうかどうかなのである。  私はエジプトの動向と、それに対する米国及び日本政府の外交を 見守っている。                            了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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