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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

小泉首相の飯島元秘書官が語った外務官僚批判
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月17日発行第210号 ■       ===============================================================         小泉首相の飯島元秘書官が語った外務官僚批判     ============================================================== =  飯島勲という元小泉首相の政務秘書官が経済誌プレジデントの11月 29日号の中で外務官僚を酷評している手記を寄せているのを見つけた。  「外務省のレトリック 『手柄は自分に、責任は他人に』」という見出し のその手記は、一言で言えばこうだ。  外務官僚は外交を自分だけ独占して組織防衛を図ろうとする。 だから外交に積極的に関与しようとする政治家を潰しにかかる。 その為には嘘をつく。責任逃れの言い訳をする。責任を政治家に転嫁する。 いざとなれば相手国に機密情報を流してまで政治家の外交の邪魔をする。  それに気づいたので、それからは小泉外交は交渉を99%終えた段階で 情報を外務省に知らせることにしていた、と。  「手柄は自分に、責任は他人に」という見出しは、佐藤優氏が外務省 批判を行なう時の常套句だ。おそらく飯島勲氏はこの手記を書くにあたって 佐藤優氏にも話を聞いているに違いない。そして佐藤優氏に外務省批判は 的確である。  しかし私の関心は、このような一般的な外務省批判にはない。  その手記の中で彼が語っている次の二つのエピソードに注目したの。  一つは拉致事件に関するエピソードだ。彼はこう述べている。  「・・・拉致問題をストップさせたのも、ある外務官僚だった。横田 めぐみさんのものとされる遺骨を調べた当時の医師は、『ニセモノとも 本物とも特定できない』といい、さらにその結果を公表しないという北朝鮮 当局との約束を無視して、『遺骨はニセモノ』と公開して外交ルートを遮断 した。しかし、その幹部は、責任を取ることなく、最高ポストの事務次官に のぼりつめた・・・」  実名こそ明かさないが、ここでいう外務官僚とはこの間まで事務次官を していた藪中三十二氏の事である事は明らかである。  拉致問題が外務官僚の失態の連続で行き詰まった事については既に散々 報じられてきたことであるが、小泉首相の元秘書官が特定してここまで外務省 幹部を批判する事は興味深い。外務省と小泉首相の関係が上手く行っていな かったことを知らせるエピソードだ。  もう一つのエピソードは対中外交だ。飯島勲氏は、小泉首相の靖国参拝問題 を「靖国政局」にしたのは外務省だと、次のように批判する。  「・・・親中派の政治家と外務省チャイナスクールが結託し、マスメディア を通して日本の保守政治家を徹底的に傷つけてきた。中国が怒っています、 アジア外交が機能不全になります、と煽る・・・」  そしてその外務官僚が、中国大使のポストを民間人に取られた事に衝撃を 受け、「丹羽大使の深夜呼びつけ事件」をでっちあげた、と次のように述べ ている。  「・・・尖閣問題が発生した時、『中国が丹羽大使を深夜に呼びつけると いう異例の事態が生じた』と報道された。  しかしその真実は(こうだ)、中国側から8時ごろに会いたいという連絡が あった。丹羽大使の都合が悪く10時でどうかと返事した。今度は中国外交部 が10時は会議があってダメということになり結局深夜0時で合意した。  これが本当の経緯なのに、新聞などの記事では深夜0時に呼びつけられた となった。  その間違った報道に対し、外務省が間違いを正さないのは奇妙だ。つまり これは、中国はけしからんという発表の蔭で、『大使は民間でだいじょうぶ なのか』という毒を織りまぜたのだ・・・」  この事もすでに報道で明らかにされている。  外務省の言うことを鵜呑みにして「深夜に呼びつけられた」という記者発表 をさせられた仙谷官房長官が、後で真相を知らされて怒ったと報じられた。  私もその報道を信じて、中国は外交常識を逸脱した傲慢な振る舞いに出たな、 などと一時間違った印象を抱いた。  間違った情報に基づいて判断するほど危険な事はないという証拠だ。  もっとも私は、飯島勲元秘書官が思っているほど外務官僚は悪知恵が働く とは思わない。  政治家を正面から敵に回すような腹の据わった外務官僚はもはや今の外務省 にはいない。  面従腹背で権力者の出方を見守るのが精一杯だ。  無能なあまり政治家に不利益を与える事はしょっちゅうある。その都度保身 のために取り繕うとする。それが政治家には敵対的に映るのである。  そんな外務官僚を厳しくとがめられない政治家もまた不甲斐ないのだ。  官僚と政治家がお互いに不満を持ちながらも、政治家は官僚組織を敵に 回せない、官僚は職を堵して自らの信念を貫けない、その中途半端な状態が 政策を不徹底、不首尾にしているのである。  しかし、飯島勲氏がその手記を締めくくっている次の言葉には全面的に同意 する。  「・・・戦時下の大本営発表はウソばかりだったが、外務省発表には、本当 の事があまりにも少ないので今後も注意が必要だ」  その通りである。  分かっていたら、そんな外務官僚を更迭して政治主導の政策を進めてみろ、 その結果責任を国民の前で堂々ととる覚悟を政治家はしてみろ、というだけの 話である。                             了

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