□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年3月24日第242号 ■ ========================================================= 今頃になって原発輸出反対を唱える緒方貞子JICA総裁 ======================================================== きょう3月24日の朝日新聞「私の視点」においてJICA総裁の 緒方貞子氏の意見が大きく取り上げられていた。 3月末にJICA総裁を退任する緒方氏に朝日が敬意を表して長い 記事を掲載したのだろう。 その緒方貞子氏の「退任所感」の中で私が違和感を抱いた箇所が二つ あった。 ひとつは彼女がこれからの援助政策は受け入れ国のためではなくその 国の人々が一番恩恵を受けるような援助をすべきだ、と言っている事で ある。 すなわちこれまでの援助は相手国の政府がその国の発展をすべて 仕切っているという前提で行ってきた。その結果相手国が人々の生活 向上を実現できないと不満が高まる。それが情報技術革命と結びつき、 「アラブの春」につながった。今後は情報革命のインパクトへの問題 意識を持って、国民が援助にどう反応するかまで総合的に考えなければ 有効な開発や発展は進められない、と。 これは建前としては一理ある。 しかし一歩間違えば内政干渉になる。 実は日本のODAがその国の政権に利用されるのではなく、民生向上に 資する形で行われなければならない、というのは我が国の援助政策の 究極のテーマであり続けた。 私は長く政府開発援助に携わって来てその問題に取り組んできた。 国民の税金を使った政府援助である以上、その国の政府が要請する開発 政策に協力することは崩せない原則なのである。 このことは特に有償援助(低利で貸した金を返してもらう援助)を 考えるとそうでなくてはならない。 それに、相手国の開発と人々の生活向上を目指した援助などというもの をどうやって見つけて、実施できるのか。そんな能力は我が国のどこにも ない。 このような我が国の援助政策の限界を緒方氏が知らないはずはない。 「アラブの春」に迎合する、「ためにする議論」だ。 しかし私が緒方氏の「卒業論文」の中で最も違和感を抱いたのは次の くだりだ。 「最後に、中東などの途上国への日本の原発輸出について、個人的な 見解として一言述べてみたい・・・自分の国でうまくできなかったものを、 外に持っていっていいのだろうか・・・広島、長崎の経験があり、原子力 には慎重なはずなのに、こんなことになった・・・」 このような事を言い出す緒方氏を見て私の緒方氏に対する批判的評価は 決定的となった。 緒方氏はまだ3月いっぱいはJICA総裁だ。 もし本当にそう思うのなら遅くはない。その気があればできるのだ。 JICA総裁として野田首相に対して原発輸出は認められませんと 言ったらどうなのか。JICAは原発輸出プロジェクトに資金援助しません と言うべきだ。 朝日新聞に掲載されたこの緒方貞子JICA総裁の言葉が波紋を呼ばない としたら不思議である。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)