□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年7月12日発行 第500号 ■ ============================================================== ストレステスト問題と肉用牛汚染問題のどちらが深刻か ============================================================== 原発事故をめぐるニュースは、ストレステストによる原発停止問題と、 福島県食肉牛のセシウム汚染問題の二つで大騒ぎになっている。 どちらが深刻か。もちろん食肉汚染である。 繰り返して言うようにストレステストによる原発停止は決まりだ。 脱原発問題は終わった。 いまや問題はそのような混乱を招いた菅民主党政権の責任を問う政局に 関心が移った。 政局だからメディアはこちらのほうを大きく取り上げる。わかりやすい。 書きやすい。書いても実害はない。 しかし福島県産食肉牛のセシウム汚染問題ははるかに重く、深刻だ。 我々が一番恐れていた体内被曝問題に直結するからだ。 ついにおそれていた事が表面化したのだ。 深刻さはほかにもある。どこまで汚染が拡がるかわからないからだ。 放置されていた枯れ草が汚染され、それを食用牛が汚染されていた。 このおそろしさだ。 それでは水はどうか。肉のほかに牛乳はどうか。野菜はどうか。それを 食べた人間は内部被曝しないのか。 深刻さはまだある。枯れ草が汚染されていたことを酪農家がどこまで知っ ていたのか。知っていたとしてどこまで危険があると認識していたのか。 そのいい加減さを誰も批判する資格はない。なぜならば酪農家もまた生活が かかっているからだ。 危険性をうすうす感じながら、それを市場に流通させた酪農家を責める ことができるか。酪農家にその牛のすべてを殺処分しろと迫れるのか。牛を 殺すのは忍びない。廃業すれば自殺するしかない。これは切ない。 検査を丸投げされた酪農家や自治体のサンプル調査が杜撰だったと誰が 批判できようか。 「とにかく止めろ」 これは7月12日の東京新聞一面トップの見出しだ。 原発を止めろと言っているのではない。 漁民が汚染水を海に流出するのを止めてくれと叫んでいるのだ。 どの新聞もストレステストのニュースを一面トップに掲げる中で、東京 新聞だけが放射線の食物汚染を最優先して書いていた。 牛の次は魚だ。放射能汚染水の海への流出は止まらず、その全容は不明の ままだ。 食物の放射線汚染は深刻だ。対応策はない。国民は動揺する。生活や経済 活動に支障が出る。だからメディアは書かない。 放射線被曝を隠蔽し、被曝対策を国民や自治体に丸投げしてきた菅・枝野 民主党政権の責任は重い。国民の怨嗟が菅・枝野に向かう。だからメディアは 書かない。 メディアが書くことは、「仮に今回検出された最大濃度の牛肉を成人が 1キロ食べたとしても、健康上問題は考えにくい」(松田尚樹長崎大学教授 7月12日日経新聞)などとということだけだ。 原発再稼動の危険性を強調し、安全第一だと訴えるメディアも内部被曝の 危険性については語らない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)