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賃上げによる日本の未来経済社会の展望(2023年度版)

本田豊(立命館大学名誉教授)

本田豊

戦後日本経済は経済成長率を重視して経済社会が形成されてきました。経済成長率重視とは、投資と輸出が経済成長の牽引役を担い、その牽引力を強化するために様々な経済政策を展開するというものでした。経済成長率が高まれば、付加価値が増加するので賃上げが実現して家計の生活水準も向上し、政府は多くの税収をえることができ、それをもとに社会保障の原資も確保することができました。

しかし、1991年のバブル経済崩壊後、投資のうち民間投資(=民間企業設備投資+民間住宅投資)及び輸出ともに増加率が鈍りはじめ、経済成長率が大幅に低下しました。

この状況を改善するため、政府は公共投資(=公的固定資本形成)を拡大しましたが、経済成長率低下に歯止めをかけることができず、副作用として多額の財政赤字が累積し、財政赤字問題が経済成長を阻害する大きな重石になってしまいました。
  
経済成長率の低下とともに、家計に分配される付加価値の増加率も鈍化し、賃上げなどによる家計の生活水準向上も大きく制約されることになってしまいました。

このような中で、もっと分配を重視した経済社会を追求すべきではないかという議論が盛んに行われるようになりました。分配を重視するということは、具体的には賃上げを重視すると置き換えてもいいでしょう。

本マガジンの目的は、賃上げに注目して、賃金上昇率の高低によって、日本の未来経済社会がどのような違った姿をみせるのかを示すことにあります。

現況の賃金上昇率は1%程度で推移しています。賃金上昇率が将来もこの水準でとどまるということは「従来型経済社会」が将来も続くということになります。それに対して、ここでは賃金上率が3%で推移するような経済社会を「新型経済社会」とよびます。

未来経済社会の時期を2030年とおき、執筆者が作成した産業・経済の長期展望モデルをもとに、「従来型経済社会」と「新型経済社会」の相違をできるだけ具体的に描き、いろいろ課題は残るが、基本的には「新型経済社会」への転換が望ましいことを本マガジンでは明らかにしていきます。

本マガジンは、毎週1回、あらかじめ決めた50回のサブテーマ(予定)にしたがって、Webメールを配信し、1年間で2023年度版を完結します。どのようなサブテーマをとありあげるかについては、「無料サンプル」を参考にして下さい。

タイトル
賃上げによる日本の未来経済社会の展望(2023年度版)
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賃上げによる日本の未来経済社会の展望(2023年度版)

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本マガジンの特長は、2015年産業連関表とSNA統計データをもとに2030年までの産業・経済が展望できる長期展望モデルを作成し、シミュレーション分析を行って、未来経済社会像を数値的に表現するところにあります。

「経済分析」が主眼ですので、どのような段取りで分析していくかをあらかじめ明らかにすることが、読者の皆様にわかりやすいのではないかと思います。そこで、本マガジンで取り上げるサブテーマ(予定)を50回分明示することにします。大学教育でいうところのシラバスみたいな位置づけです。

本マガジンの構成内容は、大きく3つに区分されます。まずは、執筆者が作成した長期展望モデルの特徴と構造について概説します。そして、2030年の長期展望に必要な主な外生変数について現状分析を行い、それをふまえて将来の想定値の考え方を明らかにします。そのうえで、「従来型経済社会」と「新型経済社会」を比較検討するために、いくつかのケースを設定してシミュレーション分析を行い、2030年日本の経済社会を展望します。

[1] 長期展望モデルの概要
未来経済社会を展望する場合、どのような経済指標でその姿をみたらいいのでしょうか。言うまでもなく、経済成長率、物価動向、実質賃金などをしっかり把握することが不可欠になります。特に、国民の生活向上がどの程度実現できるかをみるためには、実質賃金のゆくえが大切になります。

同時に、どうしても考慮しておかなければならないのは、日本経済が独自に抱える問題です。雪だるま式に膨らんだ多額の国債残高を背景とした中央政府の「財政赤字問題」があります。少子化の進行によって、将来の働き手が不足するという「労働力不足問題」に直面します。本格的な高齢化社会の中で、公的年金制度が財政的に破綻しないかという「年金の持続可能性問題」があります。これら3つの問題のゆくえが把握できる経済指標が必要になります。

中央政府の財政赤字問題がうまくコントールされているかをみるために、「債務残高・GDP比」に注目します。また、労働力不足問題に対しては、就業者動向をとらえて労働需給の見通しに注目します。年金の持続可能性については、厚生年金勘定の「単年度収支差」に留意します。
 
未来経済社会を展望する場合、GDP(実質・名目)、GDPデフレータ、就業者、実質賃金、債務残高・GDP比、厚生年金勘定の単年度収支差などの経済指標が大切ということになります。

執筆者が作成した長期展望モデルは、「GDPブロック」、「社会保障ブロック」、「財政ブロック」の3つのみのブロックから構成された簡便なものです。
 
「GDPブロック」では、実質GDPと名目GDPが決まり、その結果GDPデフレータがもとまります。また、本モデルでは、各産業の賃金や労働生産性は、外生的に与えますので、実質GDPが決まれば、就業者や雇用者所得などが決まります。「GDPブロック」で決まる経済変数としては、実質GDP・名目GDP・GDPデフレータ・就業者・雇用者所得などが重要になります。

「社会保障ブロック」は、公的年金制度、国民医療費、介護保険制度の財政をモデル化し、特に公費負担がどの程度発生するか、家計の保険料がどうなるかなどがわかるようになっています。

「財政ブロック」では、中央政府と地方政府の財政見通しがわかりますので、中央政府の財政再建が可能かどうかの見極めができるようになっています。
 
[1]でとりあげるサブテーマは以下のとおりです。
(1)実質GDPはどのように決まるか
(2)名目GDPとGDPデフレータはどのように決まるか
(3)労働市場をどのようにとらえるか
(4)家計消費支出をどのようにとらえるか
(5)基礎年金勘定・厚生年金勘定・国民年金勘定の概要と相互関係
(6)国民医療費の概要と少子高齢化社会との結びつき
(7)介護保険給付費をどのように推計するか
(8)中央政府の一般会計の概要と財政再建の考え方
(9)地方政府の普通会計の概要と財政の健全性
(10)社会保障費・一般政府の財政・GDPとの相互関係をどうみるか
(11)長期展望モデルの全体像

[2] 主な外生変数の現状分析と将来の見通し
長期展望モデルは、連立方程式体系で示すことになります。モデルから解を得るということは、連立方程式を解くと同義です。連立方程式には必ず外生変数と内生変数があります。外生変数であらかじめ与えられた値をもとに、連立方程式を解いて、内生変数の値が決まります。

外生変数の値いかんによって、内生変数の値も変化しますので、外生変数の値をどのように設定するかが、大変重要になります。特に、未来経済社会というとき、外生変数の将来の想定値が必要になります。

長期展望モデルの主な外生変数は、民間企業設備投資、民間住宅投資、公的固定資本形成、産業別輸出、産業別輸入係数、賃金上昇率、労働生産性上昇率などです。これらの外生変数が1994年~2019年にかけてどのように変化し、どのような特徴がみらかについて現状分析を行い、それをふまえたうえで、将来想定値を決めます。

[2]でとあげるサブテーマは以下のとおりになります。
(12)民間企業設備投資の現状分析
(13)民間企業設備投資のゆくえ
(14)民間住宅投資の現状分析
(15)民間住宅投資のゆくえ
(16)公的固定資本形成の現状分析とゆくえ
(17)公的固定資本形成における更新投資の重要性
(18)対家計民間非営利団体消費支出のゆくえ
(19)産業連関表とSNA統計の産業分類について
(20)輸出全体の今後の動向をどのようにみるか
(21)産業別輸出動向の現状と見通し:第1次・第2次産業
(22)産業別輸出動向の現状と見通し:第3次産業
(23)輸入全体の今後の動向をどのようにみるか
(24)産業別輸入係数の現状と見通し:第1次・第2次産業
(25)産業別輸入係数の現状と見通し:第3次産業
(26)産業別の労働生産性はどのようにとらえたらいいか
(27)産業別労働生産性の現状分析:第1次・第2次産業
(28)産業別労働生産性の現状分析:第3次産業
(29)産業別労働生産性の将来見通しの考え方

[3] 2030年日本の経済社会展望
    「従来型経済社会」vs「新型経済社会」
2030年を展望するとき、まずは前提条件が必要になります。主な前提条件として、次の3つが大切です。
➀人口構造の変化と世帯数の動向
②投資(=民間企業設備投資、民間住宅投資、公的固定資本形成)及び輸出・輸入の将来トレンドをどのように設定するか
③賃上げと労働生産性上昇率の考え方

前提条件のうち、➀と②は同じとみなし、③のみの相違に注目して、「従来型経済社会」と「新型経済社会」を比較します。

賃上げと労働生産性上昇率は、経済成長のみならず、家計消費支出を通じた国民生活、税金・保険料を通じた一般政府の財政などに影響を与えます。2030年の経済社会において、国民生活は向上するのか、経済成長はどうなるのか、財政問題は大丈夫なのか、などの疑問に応えるために、賃上げや労働生産性上昇率の相違が、経済社会に与える影響の相違を分析することは大変意味があります。

現況の低い賃上げが将来も続く経済社会(=従来型経済社会)と賃上げを重視した各経済主体の行動や最低賃金制度改善などの経済政策によって持続的に賃上げが毎年3%実現される経済社会(=新型経済社会)に区分して、2030年の経済社会の具体的姿を描きます。

新型経済社会については、労働生産性が上昇しないケース(=新型経済社会V1)と上昇するケース(=新型経済社会V2)に分けています。

[3]のサブテーマは、以下のとおりになります。
(30)前提条件:人口構造の変化と世帯数の動向
(31)前提条件:投資と輸出・輸入のトレンドをどのように設定するか
(32)前提条件:賃上げと労働生産性上昇率の考え方
(33)従来型経済社会と新型経済社会の違いはどこにあるか
(34)従来型経済社会のシミュレーション分析結果:経済成長と物価
(35)従来型経済社会のシミュレーション分析結果:労働市場
(36)従来型経済社会のシミュレーション分析結:国民生活と社会保障
(37)従来型経済社会のシミュレーション分析結果:財政再建のゆくえ
(38)従来型経済社会のゆくえ:主な特徴と問題点
(39)新型経済社会V1のイメージ
(40)新型経済社会V1のシミュレーション分析結果:経済成長と物価
(41)新型経済社会V1のシミュレーション分析結果:労働市場
(42)新型経済社会V1のシミュレーション分析結果:国民生活と社会保障
(43)新型型経済社V1のシミュレーション分析結果:財政再建のゆくえ
(44)新型経済社会V1のゆくえ:主な特徴と問題点
(45)新型経済社会V2のイメージ
(46)新型経済社会V2のシミュレーション分析結果:経済成長と物価 労働市場
(47)新型経済社会V2のシミュレーション分析結果:国民生活と社会保障
(48)新型型経済社V2のシミュレーション分析結果:財政再建のゆくえ
(49)新型経済社会V2のゆくえ:主な特徴と残された問題点
(50)どのような未来経済社会が望ましいか


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