●尖閣諸島と台湾●
尖閣諸島をめぐる話題というと、ニュースなどでよく目にするのは日本と中国との間で生じている問題を取り上げているものが大半を占めているという印象が強いと思います。ところが、じつは尖閣諸島に関しては台湾も領有権を主張しているのです。台湾は、中国と同じく、尖閣諸島周辺の海底に天然資源が豊富に存在している可能性が指摘されたことを受けて、1970年代に入ってから尖閣諸島に関する領有権を主張し始めました。
じつは、これまで尖閣諸島をめぐっては日本の海上保安庁と台湾の海巡署(海上保安庁に相当する台湾の海上警察組織)が衝突するという事例も発生しています。2012年9月25日、同年の日本政府による尖閣諸島の国有化に反対する目的で台湾の漁船数十隻が尖閣諸島の日本領海内に侵入し、警戒にあたっていた海上保安庁の巡視船がこれを領海外に退去させるべく放水などを行いました。すると、漁船と共に領海に侵入した海巡署の巡視船が海上保安庁の巡視船に対して放水を行ったのです。
通常、巡視船のような他国の公船(政府機関の船)に対して放水を行うというのは、国際法上の「免除」と呼ばれる原則に抵触するおそれがあるため、厳に慎むべき行為にあたります。現に、これまで尖閣諸島周辺を航行したり、領海に侵入したりするなどして海上保安庁と対峙してきた中国の公船でさえも、海上保安庁の巡視船に対して放水を実施したという事例は起きたことがないのです。
ほかにも、台湾は2008年以来ほぼ毎年尖閣諸島沖に広がる日本の排他的経済水域(EEZ)内で日本に無断で海洋調査を実施しています。国際法上、他国のEEZ内で海洋調査を実施するためには沿岸国(この場合は日本)の同意を得る必要があるため、こうした行為に対して海上保安庁は調査活動の動向を把握し、中止要求を実施するなどの措置をとっています。
また、最近では2020年9月27日に尖閣諸島の日本領海内で違法操業をしていた台湾の漁船と、それに対して領海外への退去を促すために接近した海上保安庁の巡視船が接触するという事件も発生しています。
尖閣諸島というと主に中国の行動に注目が集まりがちですが、同様に台湾の行動にも注意が必要です。
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稲葉義泰(国際法・防衛法制研究家/軍事ライター)