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稲葉義泰のミリタリーレポート ─軍事と法から世界を見る─

稲葉義泰(国際法・防衛法制研究家/軍事ライター)

稲葉義泰

日本は核兵器を保有できる?
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●日本は核兵器を保有できる?●


2023年9月29日、全国の劇場で映画「沈黙の艦隊」の公開が始まりました。かわぐちかいじ氏の同名コミックを原作とする本作では、極秘裏に開発された日本初の原子力潜水艦が、核兵器の搭載をちらつかせながら、独立国家「やまと」の建国を宣言するというストーリーが展開されます。そこで、本作とは直接関係ない話題ですが、日本が核兵器を保有することはできるのかについて考えてみたいと思います。


 意外に思われるかもしれませんが、じつは日本が核兵器を保有することは憲法上必ずしも禁止されているわけではないのです。その基準は核兵器の「使い方」にあります。


 まず、憲法上その保有が絶対に禁止されているのは、相手国に向かって使用される核兵器です。というのも、日本政府は一貫して「性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる」兵器である「攻撃型兵器」の保有は絶対に認められないとしているためです。この攻撃型兵器の具体例としては、大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母などが挙げられていますが、定義に照らして考えると、その理由としてはいずれも核兵器あるいは核弾頭を搭載できることが挙げられます。


 一方で、憲法上その保有が問題ないとされる核兵器も存在します。


「我が国には固有の自衛権があり、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法第9条第2項によっても禁止されているわけではない。したがって、核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものがあるとすれば、それを保有することは、必ずしも憲法の禁止するところではない。他方、右の限度を超える兵器の保有は、憲法上許されないものである。政府は、憲法の問題としては、従来からこのように解釈しており、この解釈は、現在も変わっていない。」(平成21年3月19日 衆議院議員辻元清美君提出核兵器問題等に関する質問に対する答弁書)


 つまり、日本政府としては、たとえば自国に侵攻してきた敵を攻撃するような、自衛のための必要最小限度にとどまるような核兵器を保有することは憲法上問題はないと解釈しているわけです。ただし、実際には「核兵器を持たず・作らず・持ち込ませず」という非核三原則という政策的側面と、原子力の利用を平和目的に厳しく限定している原子力基本法、および核保有国を制限して核兵器の拡散を防止する核拡散防止条約という国内法・国際法的側面から、日本政府は核兵器を一切保有しないこととしているのです。



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