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稲葉義泰のミリタリーレポート ─軍事と法から世界を見る─

稲葉義泰(国際法・防衛法制研究家/軍事ライター)

稲葉義泰

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を国際法の視点から整理

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00255/2022022509000091375 //////////////////////////////////////////////////////////////// 稲葉義泰のミリタリーレポート ー軍事と法から世界を見るー https://foomii.com/00255 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●ロシアによるウクライナへの軍事侵攻 国際法の視点から整理●  2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領は国民向けのテレビ演説を行い、ウクライナにおける特別な軍事作戦を開始したと発表しました。その詳細はここでは触れずに、ロシアの親露派武装勢力支配地域の国家承認、そして今回のロシアの軍事力行使に関して、国際法の観点から整理してみたいと思います。 ●ロシアの行動① ウクライナ東部の親露派武装勢力を国家承認  まず、今回のウクライナへの軍事攻撃の前段階として、ロシアはウクライナ東部の一部地域を占拠している親露派武装勢力が自称する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を共に国家承認しました。これに対して、国際社会からは厳しい批判が殺到しており、たとえば2月22日に開催された「G7(主要7か国)」の外相会談では、この行為が国際法に違反することを確認することで一致しています。  ここで問題となっている国家承認というのは、新しく誕生した領域的・政治的実体を、既に存在している国が国家として承認する制度のことです。しかし、どのような存在であっても国家として認められるわけではありません。ある存在が国家となるためには、そのための要件を満たす必要があります。一般的に言われるのは、1933年に締結された「国家の権利及び義務に関する条約(モンテビデオ条約)」1条に規定されている、①永続的住民、②明確な領域、③政府、④他国と関係を取り結ぶ能力(外交能力、言い換えれば他国の傀儡とはならない対外的独立)の4つです。つまり、国家とは、「一定の領域において、永住的住民を対外的にも独立した統治機構が有効に支配している」ことをもって成立します。  そして、こうした要件を欠いているにもかかわらず、たとえばどこかの国の中で独立を主張している存在を、既存の国が新国家として承認する行為は「尚早の承認」と呼ばれ、国際法に違反します。これはその国の国内管轄事項に干渉する「内政干渉」と位置付けられるためで、たとえば1778年に当時まだイギリスとの間で戦闘が継続していたアメリカをフランスが国家承認した事例では、イギリスはこれを尚早の承認であるとしてフランスに対して宣戦布告をしています。
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