世論調査で菅内閣の発足時支持率が出て、異常な高さとなった。毎日は64%、朝日は65%、共同は66.4%、日経と読売は74%。ご祝儀相場というにはあまりに高い数値であり、不自然な感覚を否めない。ネットでも、異世界とかパラレルワールドという言葉が正直な感想として並んでいる。小泉内閣と鳩山内閣に次ぐ歴代3位の記録なのだそうだ。が、正直なところその実感はなく、狐につままれたような気分で日々が過ぎている。 小泉内閣と鳩山内閣のときは、もっと社会全体が興奮して熱狂する事態が起きていた。騒々しかった。鳩山内閣の発足時の支持率と菅内閣のそれが同水準と聞いて、何かの間違いではないかと訝しく思わざるを得ない。テレビ報道は、番組を菅義偉への礼賛と宣伝で埋めて、支持率の高さを国民に証明づけるアリバイ工作みたいなことを続けているが、この数字に納得していない国民は多いだろう。が、マスコミの数字を否定する証拠もなく、疑念を口にすれば「陰謀論者」だと糾弾されるため、皆、不如意なまま黙ってこの数字を認めている。 こうした空気感で、歴代3位の発足時支持率は既成事実となったが、それが社会全体の納得を得て収まったわけではなく、個々の違和感が底辺で静かに漂い、不審と齟齬のわだかまりが沈殿して時間が流れている。この世論調査結果の微妙なところは、菅義偉に極端に高い支持率を出しながら、解散総選挙すべき時期の質問には、今すぐとか年内とは答えず、来年とか任期満了までと回答している点だ。国民世論が新政権の誕生をかくも奉祝し歓呼しているのなら、即、信を問うて民意を確かな議席にせよと求めるのが自然だろう。 この二つの世論にはギャップがある。矛盾の真相は何だろうと考え始めると、世論調査の信憑性という問題に接近してしまい、言論上の「陰謀論」の地雷を踏むリスクに遭遇するのだが、少なくとも、ここにマスコミ側の意図があり思惑があることは看取できる。マスコミ(=支配者層)が「国民の意思」と擬して方向づけている政治図が、解散せぬまま、菅義偉に支持率を維持させて1年間やらせようという謀計だと想像できる。… … …(記事全文3,464文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)