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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は?世界は?今後確実に起こる未来の歩き方。ときどき、取材裏話、スクープ、身辺雑記。

山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は?世界は?今後確実に起こる未来の歩き方。ときどき、取材裏話、スクープ、身辺雑記。

10年後、20年後、日本は、世界はどうなっているのでしょうか? 経済は? 政治は? ビジネスは? 景気は? 株価は? 生活は? 就職は? トレンドは?――それが知りたくて、私はメディアの世界で、編集者、ジャーナリストとして30年以上生きてきました。未来がどうなるのかわからないで生きているとしたら、私たちは地図を持たずに旅をしているのと同じです。では、未来は予測できるのでしょうか? 答えは「できる」です。なぜなら、未来に起こることは、すでに過去、現在に起こっているからです。

このメルマガでは、私がこれまでのメディア生活で培った視点、情報網を駆使して、日々の出来事、ニュースを読み解き、今後、確実に起こる未来を解説します。今後のビジネス、投資、生活設計などに必携の「未来地図」をお届けします。

発行者:山田順(ジャーナリスト・作家) 価格:840円/月(税込)

 
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               山田順の「週刊:未来地図」

                           No.362 2018/04/03
                            米中対決時代(4)  
               人間デジタル化、AI兵器開発が進む中国への恐怖

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 日本でもアメリカでも、中国のAI社会の行方に注目が集まっています。「注目」と言うより、「脅威」と言ったほうがいいでしょう。このままいけば、中国に先端技術で追い抜かれ、その結果、世界を支配されかねないという「中国脅威論」が、最近、さかんに言われています。
 アメリカが中国との対決姿勢を取り始めたのも、こうしたことが根底にあるからです。
 すでに、キャッシュレス、信用格付け、顔認証などの先端技術で、日本もアメリカも中国に遅れをとっています。また、AI兵器開発による軍事でも、中国はアメリカを凌駕しつつあります。このままでは、中国が世界のAI覇権を握ってしまう日が来るかもしれません。

[目次]  ────────────────────────────────

■日米で同じように唱えられる「中国脅威論」
■国家目標は「2030年までに世界をリード」
■世界の最先端を行くキャッシュレス社会
■就活にも婚活にも影響するクレジットスコア
■クレジットスコアにより全国民格付け社会に
■中国は世界一の「監視カメラ大国」
■究極の「監視社会」が完成しつつある
■未来を暗示する「ヨハネの黙示録」
■AIは軍事にもシンギュラリティをもたらす
■無人のドローンの編隊による空母攻撃
■最大の問題はトランプのシリコンバレー嫌い

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■日米で同じように唱えられる「中国脅威論」
 
 昨年秋、2017年10月、「日本ディープラーニング協会(JDLA:Japan Deep Learning Association)が、世界のトレンドに大きく遅れてやっと発足した。理事長には、AIの専門家で、東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊氏が就いたが、松尾氏はかねてから、日本のAI産業は中国に比べて遅れている、と将来に対する危惧を表明してきた。
 
 松尾准教授や AI研究の第一人者と言われる東京大学特任教授の中島秀之氏が指摘するのは、次の2つの点である(注:これまでの2人のインタビュー記事などからのまとめ)。

 1つ目は、研究予算の少なさだ。AIほど研究を重点的にやらなければならない分野はないのに、日本政府の研究予算は欧米に比べて2桁は低く、中国に比べたら圧倒的に少ない。
 2つ目は、現在のAIは、ディープラーニングと呼ばれる機械学習技術の進化によって、画像や音声の認識率が格段に上がっているが、これに必要なビッグデータが足りないこと。日本企業にはビッグデータの収集モデルがなく、AIに学習させることができない。
 この2つの点は致命的で、日本のAIは、中国にもアメリカにも大きくビハインドしていると言う。
 
 日本の代表的な知性がこのような危惧を表明するなか、アメリカでも、グーグルの元CEOのエリック・シュミット氏が、同じような危惧を表明している。
 『ビジネスインサイダー』(2017年11月1日)の記事によると、シュッミット氏は政府がなにもしなければ、(あと5年で)中国はアメリカのAI研究分野を上回るだろうと述べた。
(Eric Schmidt, the executive chairman of Google parent company Alphabet, has warned that China is poised to overtake the US in the field of artificial intelligence (AI) if the US government doesn't act soon.)

■国家目標は「2030年までに世界をリード」
 
 中国は、いまや習近平の独裁国家と言っていい。したがって、国家が目標を定めれば、それに向かって予算も人材も一気に投入できる。すでに何度も書いたように、中国の最大の国家目標は、2049年の建国100周年までに、アメリカをしのぐ「世界一のエンパイア」になることである(=「中国の夢」政策)。
 そうした国家目標の一環として、AIの研究開発が挙げられる。

 昨年7月、中国政府は「新世代のAI開発計画」を発表し、その中で、「中国は、2030年までにAIで世界をリードする」と宣言した。そうして、11月になると、AI開発における4つの分野で、それぞれの分野をリードしていく企業を決定した。
 
 AI医療(ヘルステック):テンセント(騰訊)
 スマートシティ:アリババ(阿里巴巴)
 自動運転車:バイドゥ(百度)
 音声認識:アイフライテック(科大訊飛)
 
 この4社はいずれも中国を代表するIT企業であり、世界的なビッグビジネスである。株式時価総額で見ると、テンセントは世界第5位、アリババは世界第8位である。とくにテンセントは、今年1月に中国企業として初めて5000億ドルを突破し、フェイスブックを抜いてアマゾンに迫った。日本一の企業トヨタの株式時価総額は約25兆円だから、テンセントの株式時価総額はその倍以上である。

 こんな大企業に、中国政府は惜しみなく予算をつぎ込むのだから、アメリカはもとより、日本はもう完全に周回遅れになったと言えるだろう。

 2月22日の『日本経済新聞』の記事「AIスタートアップ資金調達、中国が世界一 米国抜く」によると、アメリカの調査会社CBインサイツが公表した世界のAIスタートアップ企業による2017年の資金調達額は152億ドル(約1兆6264億円)で過去最高。このうち中国企業が48%を占め、アメリカの38%を上回った。中国は2016年の11.6%からこの1年で急拡大したという。

■世界の最先端を行くキャッシュレス社会

 では、現在、中国のAI社会はどうなっているのだろうか?
 まず挙げられるのが、キャッシュレス経済の急速な進展ぶりだ。最近、中国に観光で行った人間が、「中国はすごい」と真っ先に挙げるのがこの点である。なにしろ、中国ではスマホ1つでなんでも決済できる。交通機関、コンビニ、などはもとより、屋台でも現金は使われていないので、いまだに現金社会で暮らす日本人は目を丸くする。
 
 中国の都市部でのスマホの普及率はほぼ100%に近い。したがって、中国人はあらゆることをスマホで行う。オンラインショッピング(eコマース)は日本よりはるかに進み、リアル店舗でのショッピングもキャッシュレスだ。
 中国で主流のスマホ決済アプリは2つ。テンセントの「WeChat Pay」(ウィーチャットペイ)とアリババの「Alipay」(アリペイ)だ。この2つは、日本でも支払い可能な店舗やタクシーなどのサービスが急拡大している。なにしろ、中国人はいまや現金を持ち歩かなくなったからだ。

 このような中国と比べて、日本は完全に遅れてしまったが、IT先進国のアメリカがまだキャッシュレス社会になっていないことには驚く。アメリカでは「現金お断り」という店を見かけたことはない。スーパーに行っても、現金で支払っている人がいる。しかし、北京、上海のスーパーではそんな光景は見かけなくなった。
 余談だが、アメリカがキャッシュレスになった場合、ウエイター、バーテンダー、ドアマン、フードデリバリーマン、ポーター、コンシェルジュなど、チップで生活費を稼ぐ人たちはどうするのだろうか? スマホで相手のスマホにチップ(デジタルチップ)を渡すのだろうか?
 
 キャッシュレスの進展は、中国ばかりではない。北欧諸国では中国以上にキャッシュレスが進み、スウェーデン、ノルウェー、デンマークはいずれもGDPに対する現金の使用比率が5%を下回っている。とくにスウェーデンは現金使用率2%で、現金では鉄道やバスにも乗れない。銀行はもはや現金を置かないキャッシュレス店舗がばかりだという。

■就活にも婚活にも影響するクレジットスコア

 キャッシュレス社会になると、人間はすべてデータ化される。そして、そのデータに基づいて「信用格付け」(credit rating)が行われ、これによって社会生活のほとんどが規定されるようになる。 
 アリババの決済サービス「アリペイ」が提供する「セサミ・クレジット」(芝麻信用)のクレジットスコアは、その代表と言えるだろう。クレジットスコアが高ければ、さまざまなサービスで優遇される。そでばかりか、就活、婚活にも大きく影響する。

 たとえば、登録ユーザー1億人と言われる婚活サイト「百合網」では、芝麻信用のクレジットスコアが使われている。プロフィール欄にクレジットスコアが表示されるので、それによって相手を判断できる仕組みになっている。中国では収入の多寡と持ち家が結婚の最大の決め手となるので、クレジットスコアが低い男性は、まったく引き合いがなく、結婚難民化してしまう。
 では、クレジットスコアはどうやってカウントされるのだろうか? もちろん、「芝麻信用」では、スコアリングの方法を公表していないが、各種サイトの情報を見ると350点~950点の範囲で、次のような項目で算出されているようだ。

・アリババが運営するSNS上での交友関係
・アリペイでの支払い履歴(購入履歴)
・購入履歴による嗜好性
・クレジットカードの返済履歴
・不動産の保有状況
・クルマの保有状況
・最終学歴
・職業、職歴(キャリア)と年収
 
 このうち、不動産の保有状況や最終学歴などアリペイ上では把握できない項目は、ユーザーが自ら入力するようになっている。となると、そんなことまで入力する人は少ないと思えるが、じつはユーザーはこれをすすんで行う。というのは、スコアが高いと、何事においてもトクできるからだ。
 スコアの中間値は550点〜699点とされ、600点以上だと「信用良好」とされ、たとえば、レンタカー、病院での診察、図書館での本の貸出しなどのサービスでデポジットが免除される。中国ではほとんどすべてのサービスにデポジットが必要なので、クレジットスコアのアップのために人々は必死で頑張るようになった。
 しかし、これは人間の格付けであるから、知らず知らずのうちに階級社会ができあがっていく。ちなみに、このスコアリングは、すでにAIが行なっていると言われている。
 
■クレジットスコアにより全国民格付け社会に

 クレジットスコアは、日本でもアメリカでも広がりつつある。たとえば、クレジットカードは、クレジットヒストリーによってカードの種類、使用限度額が設定されている。また、金融機関では、個人のクレジットスコアをもとに与信を審査している。
 ただし、日本とアメリカが中国と異なるのは、中国のテンセントやアリババのような巨大な統一されたプラットフォームがないことだ。アメリカにはアマゾンがあるが、いまのところeコマースだけのデータだから、テンセントには及ばない。しかも、欧米社会や日本社会は個人主義が基盤であり、プライバシーは保護されることになっている。そのために、個人情報は企業ごとにクローズされている。

 しかし、中国はプライバシーの概念そのものが存在しない。なにしろ、憲法に「中国共産党が人民を指導する」と書かれている国だから、国民の情報は国家によって一元管理される。テンセントもアリババも共産党の管理下にあるので、北京は情報を覗き放題である。
 また、国民のほうもそうされることに慣れてしまい、いまやまったく諦めてしまっている。アナログ時代は、なんとか国家の監視の目をかいくぐって、タンス預金をしたり、資産フライトをしたりしていたが、デジタル時代になり、マネーがデジタルになってしまったいまは、それは不可能になった。

 このようにして、中国では習近平一強体制の下に、全国民の格付けが急速に進んでいる。人間がデジタルデータとなり、それぞれがスコアによって評価され、行動が規制される社会がつくられていく。スコアが低く信用がない人間には、たとえば列車や飛行機のチケットが販売されず、施設の入場なども拒否される。
 就職、転職から結婚、出産など、ほぼすべての社会活動において差別化が進み、政府の監視の目は強化されていくのだ。

■中国は世界一の「監視カメラ大国」
 
 キャッシュレス、クレジットスコアと並んで、ものすごい勢いで中国社会に導入されているのが、「監視カメラ」である。すでに、このメルマガの「No.333:世界どこに行っても監視カメラが行動を見張っている」(2017年10月31日配信)に、このことは詳述したが、ここで要点だけ述べると次のようになる。

・現在、世界中で監視カメラが設置されるようなったが、世界の監視カメラの約7割が中国にある。
・世界で稼働している監視カメラの多くが中国製。中国は監視カメラ生産では世界一である。
・昨年9月、中国政府は、最先端のAIが搭載された防犯カメラを、すでに2000万台以上導入済みであると発表した。このAI搭載カメラが中国の犯罪者追跡システム「天網」の運用の一翼を担っている。
・「天網」システムの監視カメラは、街を歩く人間、車を運転している人間をピンポイントで特定することができる。GPSと顔認証技術を用いて情報を解析し、「信号を無視した車」、「いきなり走り出す通行人」などを捕捉すると、データベースにある犯罪者のものと顔認証を比較し、一致すれば即座に警報が鳴り警官が駆けつける。

 SNSユーザーの多くは、自分の顔写真を公開している。また、運転免許証、学生証、社員証、パスポート、なんらかの組織の会員証など顔写真が使われているものはいくらでもある。中国の場合、これらの顔写真はすべてデータベース化され、当局に一元管理されているのは間違いない。そして、このデータから、AIは顔認証によって「特定人物」を割り出すのだ。

■究極の「監視社会」が完成しつつある

 前記したように、中国にはプライバシーは存在しない。国家がその存在を許さない。そのため、AIの開発に必要不可欠な個人データを、テンセントやアリババなどのAI企業が簡単に収集できる。そして、顔認証とこの個人データを紐付ければ、14億人の中国国民は全員デジタルデータとなってデータベースに収納される。

 中国のスタートアップ企業メグビー(曠視科技)やセンスタイム(商湯科技)は、画像認識技術では世界有数だと言われている。もちろん、政府の「新世代のAI開発計画」の援助を多大に受けている。すでに、メグビーは14億人の顔データの収集が終わったと言われている。中国全土に張り巡らされた監視カメラ、そしてSNSにより、毎日、膨大なビッグデータが集まり、解析される。
 もはや、中国では反体制運動などできなくなっている。

 アメリカのテレビドラマ『24』には「CTU」(Counter Terrorist Unit=テロ対策ユニット)というシステムが登場する。これは、街頭の監視カメラに侵入し、テロリストの姿をいったん補足すると、次々と別のカメラを使ってその人間を追っていくというものだが、すでに中国はこのシステムをほぼ完成させていると見ていい。

 そして、ここでの問題は、この監視システムが、中国国民に止まるかどうかである。当然、そんなはずはなく、全世界の人々に拡大していくのは間違いない。
 アメリカにおいても、すでにグーグルやフェイスブックなどのIT企業は政府に収集したデータを提供している。その結果、CIAやFBIは監視用データベースをつくっている。
 また、アメリカ入国にはパスポートのほかにESTA(エスタ)が必要で、入国の際には指紋採取と顔認証が行われている。つまり、データベースはアメリカ国民だけではなく、全世界の人々に拡大しているのだ。
 では、アメリカと中国はどこが違うのか? それは、政府が民主政体で、憲法により国民の自由と財産権が保護されていることだ。中国にはこれがない。

■未来を暗示する「ヨハネの黙示録」
 
 ここで、突然だが、「ヨハネの黙示録」(Revelation)の13章16、17、18を引用する。そこには、こう書かれている。

《16 It also forced all people, great and small, rich and poor, free and slave, to receive a mark on their right hands or on their foreheads, 
17 so that they could not buy or sell unless they had the mark, which is the name of the beast or the number of its name.
18 This calls for wisdom. Let the person who has insight calculate the number of the beast, for it is the number of a man. That number is 666.》

(16小さな者にも大きな者にも、富める者にも貧しい者にも、自由な身分の者にも奴隷にも、すべての者にその右手か額に刻印を押させた。
17そこで、この刻印のある者でなければ、物を買うことも、売ることもできないようになった。この刻印とはあの獣の名、あるいはその名の数字である。
18ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は666である。)

 どうだろうか? ここでいう「刻印」(mark:マーク)とは、現代のデジタル社会を考えれば、なにに置き換えられるかわかるだろう。「ヨハネの黙示録」は、未来の私たちを暗示してはいないだろうか?

■AIは軍事にもシンギュラリティをもたらす

 監視社会と並んでAIがもたらす大きな変革は、AI技術が軍事に用いられると、アメリカと中国のパワーバランスが簡単に崩れてしまう可能性があることだ。人民解放軍はいま、「AI軍事革命」を進めており、「AI兵器」を次々と開発している。人民解放軍は、「軍民融合」という国家的戦略により、民間のAI技術を軍事に転用しようとしている。そして、前記したように軍事においても「2030年までに世界をリード」しようとしているのだ。

 このことを「新アメリカ安全保障センター」(CNAS:The Center for a New American Security)の研究者エルサ・カニーア氏(Elsa B. Kania)が、2017年11月発表の論文で警告している。この論文のタイトルは「戦場のシンギュラリティ」(Battlefield Singularity:Artificial Intelligence, Military Revolution, and China’s Future Military Power )。なんとも的を射た素晴らしいタイトルだ。

 →論文はここにあるので、詳しく知りたい方はここに飛んでほしい。

https://www.cnas.org/publications/reports/battlefield-singularity-artificial-intelligence-military-revolution-and-chinas-future-military-power

 シンギュラリティとは「特異点」と訳されているが、これはAIが人間の能力を超えてしまう点で、以後、社会は一変すると考えられている。これは軍事にも言え、AI兵器が人間の能力を超えてしまうと戦争は一変してしまうのだ。
 この戦場のシンギュラリティに、中国はアメリカより先に到達しようとしていると、エルサ・カニーア氏は警告しているのである。

■無人のドローンの編隊による空母攻撃

 具体的に言うと、AIの画像認識技術を応用すれば、目標の認識がきわめて正確になり、兵器の能力は飛躍的に向上する。また、ロボットやドローンなどが、自ら判断して行動できるようになると、戦闘のスピードに人間の頭脳がついていけなくなる。つまり、戦場に人間は必要でなくなり、シンギュラリティが訪れるというのである。

 実際、人民解放軍はアメリカの空母をドローンで攻撃することを考えているという。昨年6月、中国電子科技集団(CETC)は、119機のドローンの編隊飛行のテストに成功した。それまでの記録は67機だったので、一気に倍の編隊をつくれたのである。このようなドローン編隊によって、空母を攻撃しようというのだ。いずれ、ドローンには人間の頭脳をしのぐAIが搭載され、自分の判断で大編隊となって、アメリカの空母目指して飛んでいく。

 アメリカ軍は、1990年代に情報技術の進展とともに、「RMA」(Revolution in Military Affairs:軍事革命)を実現させた。これは、IT技術を活用した精密誘導兵器、サイバー攻撃、ステルス爆撃機などの開発、実用化を指す。しかし、いまや、中国のほうが積極的に次世代のAI技術を用いて、軍事革命を起こしているのである。

■最大の問題はトランプのシリコンバレー嫌い

 このような状況のなかで、最大の問題点は、やはりアメリカ大統領である。対中強硬路線に舵を切り、中国をターゲットにした“トランプ関税”を発動させたことは評価できる。しかし、この大統領のアタマの中では、AIやロボット、IT産業より、鉄鋼産業や自動車産業などのほうが大事なのだ。

 実際、トランプは選挙期間中にシリコンバレーに1回も行かず、ラストベルトばかりに足を運んでいた。この錆びついたアタマの持ち主は、シリコンバレーに集まった移民の優秀なエンジニアたちより、朝からダイナーでクアーズを飲み、ステーキをたいらげている白人労働者のほうが好きなのである。

 トランプは大統領就任前、トランプタワーにIT企業の幹部たち13人を招いたことがある。そして、アップルのティム・クックCEO、アマゾンのジェフ・ベゾスCEO、 フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOなどを前に、「見事な革新性をこれからも見せ続けてほしい。世界を見渡してもあなた方のような人はいない」と言ったが、口先だけだった。
 
 トランプの民主党嫌い、オバマ嫌いは筋金入りで、リベラル色が強いシリコンバレーの人間たちをほとんど憎んでいる。スタバのコーヒー片手に『ワシントン・ポスト』を読むなどという人間は許せないのだ。

 この3月29日、トランプは得意のツイッターで、アマゾンが「州・地方政府に税金を払っていないで、郵政公社を配達坊やのように使っている」と述べ、「何千もの小売業者を倒産に追い込んだ」と非難した。ジェフ・ベゾスは、最近は「ホールフーズ」を買って小売にも積極的なのに、そんなことはどうでもよく、『ワシントン・ポスト』のオーナーとして“フェイクニュース”を流していることが許せないのだ。

 しかし、中国の脅威を考えたらそんなこと言っている場合ではない。アマゾンのような先端企業はアメリカの誇りであり、先端技術で世界をリードできなければ、アメリカの世界覇権は失われてしまう。ラストベルトに製造業が復活して雇用が増えても、その雇用はやがてロボットやAIに奪われてしまうだろう。

(*これで「米中対立時代」を終わります。先週から4回にわたって書いてきましたが、この先、中国をバックにつけた北朝鮮との首脳会談を控え、アメリカの行き先が本当に不安です。そして、アメリカについてくしか選択肢のない日本の行く先はもっと不安です)

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■著者:山田順(ジャーナリスト・作家)
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